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節税対策で有効な「概算経費」とは?

節税対策で有効な「概算経費」とは?

節税対策で有効な「概算経費」とは?

開院当初から患者さんが詰め掛け、経営がすぐに軌道に乗るなんてことはありません。「10年かかってやっと黒字に転換」といったケースはごく普通にあります。開院から数年は売上もなかなか上向かないものです。しかし、経費は出ていきますし、税金は支払わなければなりません。売上がそこまで大きくない場合には、医師だけに認められた特別な税制上の措置を使ってみるのはどうでしょうか。

「概算経費」とは?

「概算経費」とは、個人事業主が経費計算の事務作業に煩わされないようにと導入されている経費の計算方法です。例えば、クリニックの待合用に毎月購入している雑誌代を計算する、などを行っていると、毎月のレシートを集めて集計などの作業が発生します。これを逐一行うと時間がいくらあっても足りず本業に影響するでしょう。

そこで「売上の○パーセントを経費とする」という仕組みを設け、そのような作業を行なわなくてもよいようにした、というわけです。

これは租税特別措置法第26条に定められています。以下のような条文です。

第二十六条 医業又は歯科医業を営む個人が、各年において社会保険診療につき支払を受けるべき金額を有する場合において、当該支払を受けるべき金額が五千万円以下であり、かつ、当該個人が営む医業又は歯科医業から生ずる事業所得に係る総収入金額に算入すべき金額の合計額が七千万円以下であるときは、その年分の事業所得の金額の計算上、当該社会保険診療に係る費用として必要経費に算入する金額は、所得税法第三十七条第一項及び第二編第二章第二節第四款の規定にかかわらず、当該支払を受けるべき金額を次の表の上欄に掲げる金額に区分してそれぞれの金額に同表の下欄に掲げる率を乗じて計算した金額の合計額とする。

参照・引用元:『e-GOV』「租税特別措置法」

法律の条文なので回りくどい表現になっていますが、要は、社会保険診療報酬が5,000万円以下で、かつ自由診療報酬(雑収入も)を入れて売上が7,000万円以下の場合には、「概算」で経費を算出してもよいということです。

概算経費の計算方法は以下になります。


社会保険診療報酬加算額
2,500万円以下
72%
-
2,500万円超~3,000万円以下
70%
50万円
3,000万円超~4,000万円以下
62%
290万円
4,000万円超~5,000万円以下
57%
490万円

かなり税金をお得にすることも可能

例えば、(他に収入がなく)社会保険診療報酬が3,000万円で実際の経費が1,500万円だった場合を計算してみると、実経費で計算した場合

売上3,000万円 - 実経費1,500万円 = 1,500万円

1,500万円が所得となってこれに税金が掛かります。

しかし、概算経費で計算すると、

売上3,000万円 × 70% + 290万円 = 2,390万円

ですので、

3,000万円 - 2,390万円 = 610万円

610万円が所得になってこれに税金が掛かります。つまり890万円分お得です。

節税はいかに所得を小さくできるかが勝負です。つまり極論すれば、売上を下げるか、経費を積むかの二択です。

このようなケースでは明らかに「概算経費」を使った方が税金が安くなります。しかし、国税も大したもので、微妙なケースも多々あるのです。当然ですが、実経費を積んだ方が金額が大きくなる場合はそちらを取るのが良策です。

また、この概算経費でいくのか、実経費でいくのかは確定申告の際に「こちらで計算しました」と選択することで可能というとてもありがたい制度になっています。ですので、どちらを取るかは確定申告時に選ぶことができます。

奥さんに給与を出すときは気を付けよう!

注意したいのは、「青色事業専従者給与」です。これは家族をクリニックで雇用する場合に申告しておくとその給与も経費にできるというものです。例えば、奥さんがクリニックの事務に携わっている場合、奥さんに給与を支払い、それを経費としたい場合には届け出を提出しなければなりません。

なぜこんな面倒なことになっているかというと、生活を共にしている配偶者や親族に支払った給与は原則経費にできないのです。ですから、そうするのなら特別な届け出を税務署に出せ、というわけです。

ただし、これを行うと個人事業主、すなわちクリニック院長の扶養控除38万円がなくなります。また、例えば「青色事業専従者」が奥さんであれば、奥さんの給与から所得税、住民税を引かれます。給与を算入して得になるのか損になるのかの計算はきちんとしておかないといけないというわけです。

また厄介なことに、届け出を出してから後で取り消すことはできません。ですので、個人事業主としての確定申告をどうするのかまで考えてから「青色事業専従者給与」の届け出を出すかどうかを決めるのがおすすめです。

概算経費を使うのなら、いわば経費にできる金額は上記の計算で出ます。ですから、例えば奥さんの給与を経費にしてもその金額内にしか入りません。つまり「所得税分と住民税を支払わなければならないぶん損だ」という考え方もできます。

これは個人事業主の場合ですが、医療法人としてクリニックを開院する場合にも同様の特例措置があります。これは「租税特別措置法」第67条に記載されています。

クリニックを開院してすぐはなかなか売上も上がらないもの。それで税金までごっそり持っていかれては大変です。クリニックの経営を安定させるためにもお金は大事にしなければいけません。ですので、開院前から概算経費についての知識は持っていてください。





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