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不穏患者と上手く付き合うコツ

不穏患者と上手く付き合うコツ

不穏患者と上手く付き合うコツ

みなさんは、「患者が不穏」と聞くとどのような状態を想像しますか?

  • 落ち着きがない
  • すぐに感情的になる
  • 何度も同じ行動をしようとする

などをイメージされる方が多いのではないでしょうか。

「不穏」とは主に精神科で使われる用語 で、とりわけ統合失調症の方に出やすい症状とされています。しかし実際は、不穏になる原因は統合失調症だけではありません。さまざまな症状で通院ないし入院している患者が、不穏な状態になることがあるのです。

そこで本記事では、「不穏患者」と日々どのように付き合っていくかとよいか、また、気を付けるべきことなどを実体験をもとにご紹介していきます。

不穏とは

「不穏」という言葉は、医療現場においては、自分の感情に対して理性が利きづらい症状を指します。

「だめ」「してはいけない」「できない」とわかっているのに自分を抑えられなかったり、恐怖感から人に八つ当たりしてしまったりしやすくなります。

病気だけが不穏の原因ではない

不穏の症状は、認知症患者やその他の疾患の患者にも見られることから、近年は、「不穏とは病気だけが原因で出るものではない」という考え方が一般的絵dす。

医療現場ではよく見られる症状ですので、いかに不穏患者とうまく付き合っていけるかがカギとなってきます。

続いては、不穏患者と接してきた実体験についてお話します。

認知症周辺症状との関連性

不穏と認知症には関連性があります。認知症の症状でもある「夕暮れ症候群」「帰宅願望」と相まって不穏になる患者が非常に多いです。

  • 日が暮れてくると、夕飯の準備をするために帰りたくなる
  • 日が暮れてきたのに誰も迎えに来てくれない場合、余計に帰りたくなる
  • いつまでここ(病院)にいないといけないのか急に不安になる

中度の認知症の方の多くは、夕方、日が暮れる頃になると急に不安になり帰宅願望が強くなります。

認知症患者の不穏症状としては、特に落ち着きのなさが目立ちます。あまりにも興奮すると危険行動をしたり、その興奮が夜間帯まで続くと眠れなくなり昼夜逆転してしまったりといったケースも少なくありません。

薬が苦手

夕飯前、食前薬を飲みたがらない患者がいました。

夕飯が近づくと薬の服用を促されることが憂鬱なのか、だんだん落ち着きがなくなり怒りっぽくなっていました。

薬剤師と話し合った結果、薬が合っていないのかもしれないという結論になり、薬を変更して、夜の薬を昼間にまとめて飲むことになりました。

夜の薬が無くなったことで不穏になることもなくなり、笑顔も見られるようになりました。

「なんであの薬を飲むの嫌がっていたんですか?」と尋ねると、「あの薬があまりに苦くてご飯がまずく感じるから嫌だった。看護師にしつこく『飲んで』と言われるのもストレスだった」と話してくれました。

薬の成分等が体に合わないということではありませんでしたが、味が苦手、楽しみにしているせっかくのご飯の味を損ねるといった理由で、その患者は不穏になっていたことがわかりました。

周りの患者がどんどん退院していくことによる不安

これは実際にわたしが遭遇した患者の話です。

粉砕骨折で入院していたAは、歩行状態などが安定してきたら退院できる予定でしたが、術後の傷口から感染症が見つかり、退院が先延ばしになっていました。

同フロアには、もAと同じく整形の患者ばかり。傷が治り次第帰れるといった患者がほとんどでした。

長くても2ヶ月、早い人で1ヶ月足らずで退院する人もいました。

そんななか、Aももうじき退院と思っていた矢先に退院が先延ばしになると、ショックであまり部屋からも出なくなり、周りとも交流しなくなってしまいました。

その頃からAは後ろ向きな発言をするようになりました。そして、ついに限界を迎えたある日、「いつまで経っても退院できやしない。治療の仕方が悪いんじゃないか?」と看護師に怒鳴ったのです。

無理もないとみんな思っていたので、話を聴いてあげることしかできませんでした。

その後も、周りはどんどん退院していくのに自分はいつまでたっても退院できない歯がゆさを看護師にぶつけ、夜間帯には何度も、「もういい。わたしは帰る」といって帰る準備をしだしたり、何度も奥さんに電話して不満をぶつけたりしていました。

不穏患者との付き合いにおいて工夫したけど逆効果だったこと

さまざまな不穏患者のタイプをご紹介しましたが、続いては、そうした患者とうまくやろうとしたものの逆効果だだったことをご紹介したいと思います。

理論的に説明する

毎日決まって15時過ぎあたりから、不穏になり大声を出したり暴言を吐いたりする男性患者がいました。

食事をしたこと、自分のいる場所などすぐ忘れてしまうほどの認知症も一因でした。

  • いつまでも食事を出さないとはなんて病院だ
  • はやく自分を家に帰せ
  • なんで自分はここにいるんだ

いつもこのような内容で怒っていました。

たとえ相手が患者でも、あまりにも長時間大きな声で罵声や暴言を浴びせられると、看護師のわたしたちでも精神的に参ってしまいます。

そのため病棟カンファレンスで、その患者が不穏になったときはあまり近寄らないことを心掛けようという結論になりました。

それからしばらく経ったある日、同僚の看護師がその患者に向かって話していました。

そこで近づいて聞いてみると、患者 「早く俺を家に帰してくれよ!」

看護師「できません。あなたは患者で入院しています」

患者 「どこも悪いとこなんかない! 食事もろくに出さない病院なんかにいたくない!」

看護師「あなたは〇〇年〇月に~の手術のために入院しています」

患者 「知らねーよ! いいから早く帰せよ!」

看護師「帰せません。他の患者さんもいますので大声をあまりださないでください」

と理論的に患者を諭そうとしていました。

しかし、興奮している不穏患者に理論的に説明してもなかなか伝わりづらく、さらに興奮させてしまうこともあります。

現に同僚看護師の対応によって男性患者は余計に興奮してしまい、事態は悪化してしまいました。

様子を見るといってその場を離れたら…

Bという90代の女性患者は、重度の認知症を患っていて歩行も困難。ベッドから車椅子への移乗も介助が必要な状態でした。

Bは夕方から夜中にかけて不穏になる患者で、点滴の自己抜去などの危険行為が何度もありました。

その日は日曜日で、平日より少ないスタッフで業務をおこなっており、その患者にはクリップタイプのセンサーと体動センサーの2つを付けてもらっていました。

Bはいつものように15時頃から不穏になりはじめ、2つのセンサーが引っ切り無しに鳴っている状態でした。

しかし、歩くこともままならないため、ベッドから出ることはないだろうとみんなしばらく放っておきました。

ところが数分後、ずっと鳴っていたセンサーが急にならなくなり 、不思議に思って看護師がBの部屋に行ってみると、Bは床に転落していたのです。

なぜ2つのセンサーがならなかったのかというと、●クリップセンサー→Bが自分で外していた。

●体動センサー→右向きで寝ることが多かったため右寄りに付けていたが、左側から転落していた。

床には除圧マットを敷いていたので、特に外傷などなかったことだけが幸いでした。

この事故の要因として考えられることは、以下のことが挙げられます。

  • ●不穏な患者を残し、その場を離れたこと
  • ●歩行困難ということで、ベッドから動くことはないと思い込んでいた
  • ●起こりうるリスクを考えられていなかった

その場を去った看護師の考えとしては、一旦時間を置き1人になることでBの興奮が和らぐのではないかというものでした。

結果からするとそれは逆効果で、Bは1人ぼっちになってしまったと感じてさらに不穏になってしまったのです。

不穏患者と上手く付き合うコツ

続いては、不穏患者と上手く付き合うコツについてご紹介したいと思います。

傾聴と共感

これは特に認知症の症状のある不穏患者とのコミュニケーションにおけるコツになります。

認知症の不穏患者は特に感情的になり易いことから、はじめから頭ごなしに患者の意見を否定するとさらに不穏になりやすいです。

認知症の度合いにもよりますが、重度の認知症になってくると、痛みを感じづらくなる傾向もありますので、何か事故が起きたとしても、患者からの訴えがなく事故の発見が遅くなってしまうケースもあります。

上記のことも踏まえ、認知症症状のある不穏患者と付き合う上では「傾聴と共感」を常に意識し、「あなたの気持ち・考えに共感しているよ」というような姿勢で接するのがいいでしょう。「この人は私の気持ちをわかってくれる」といった安心に繋がり、不穏の症状が出ていても落ち着く傾向にあります。

目の届く範囲で見守り

不穏の原因は寂しさからくることも少なくありません。

忙しくても車椅子に移乗していただいて、自分の目の届くところにいていただくなど、「わたしたちはあなたのことを気にかけていますよ」という姿勢を見せることもとっても重要になってきます。

病室外で気分転換できる時間を設ける

病室といった閉鎖的な空間で誰とも接することのない時間が続くと、「自分はなんでここにいるんだろう?」「いつまでここにいないといけないんだろう?」と不安になり、不穏になる方もいらっしゃいます。

そんな方にはちょっと廊下を散歩していただいたり、デイルームで他の患者と交流してもらったりするのがおすすめ。うまく病室から連れ出して、気分転換を促すのもいいでしょう。

まとめ

不穏患者と上手く付き合うコツを知っていると、患者の本当の思いも引き出しやすくなります。

ぜひ本記事でご紹介したことを実践していただき、不穏患者とのコミュニケーションを図ってみてくださいね。

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