クリニックの待ち時間対策できている?
クリニックで「待ち時間対策」を行うことは非常に重要です。患者さんの不満は待ち時間が長いことに集中しがちで、不満を放置すると来院率が下がり、医療収入の減少につながります。またSNSでクリニックの悪評が立つと被害が大きくなります。ネットでの評判は瞬く間に広がり、後からこれを消すのは容易なことではありません。
医療もサービス業の一種であることを忘れてはいけないのです。
また、コロナ禍のため患者さん自身がクリニック内に長居はしたくないと考えるようになっています。この患者さんのニーズにも応えるようにクリニックができる対策は行う必要があります。対策を行い、患者さんの待ち時間を減らすことができれば、逆に良い評価を得て来院数を増やすことも可能です。クリニックの経営のためにも「待ち時間対策」は行った方がいいのです。
クリニックへの不満第一位は「待ち時間」
まず、患者さんがいかに待ち時間に対して不満を抱いているかを確認してみましょう。『日本医師会』の「第5回 日本の医療に関する意識調査」に以下のようなデータがあります。
受けた医療に満足していない人の理由についてのアンケート調査の結果です。
満足していない項目 | 比率 |
待ち時間 | 44.4% |
医師の説明 | 43.4% |
治療費 | 41.4% |
医師の態度や言葉使い | 29.3% |
医師の知識や技術 | 25.3% |
診察日や診療時間 | 25.3% |
検査や画像診断 | 14.1% |
看護師の態度や言葉使い | 8.1% |
データ引用元:「第5回 日本の医療に関する意識調査」
このように患者さんの不満第1位は「待ち時間」なのです。
平均的な待ち時間とは
では待ち時間はどの程度なのでしょうか。これについては『厚生労働省』の「平成29年受療行動調査(確定数)の概況」の中にデータがあります。
大・中・小の病院の規模で「待ち時間」を分析したものですが、小病院の方が待ち時間は短く、「15分未満」が33.5%になります。待ち時間が30分未満で済むのは、
病院規模 | 30分未満の割合 |
大病院 | 46.5% |
中病院 | 47.3% |
小病院 | 57.2% |
です。小病院の57%が30分未満で済みますが、中・大病院では5割を切ります。医師・クリニック院長は、まずは30分未満で済むように対策を考えるべきです。このデータから見ても、30分を超えると平均的な待ち時間とはいえず、患者さんが不満を抱くと考えられるからです。
※『厚生労働省』のデータを基に作成
参照・引用元:『厚生労働省』「平成29年受療行動調査(確定数)の概況」
順番予約型と時間帯予約型、時間指定予約型
待ち時間対策としてクリニックにお勧めできるのは、「診療予約システム」を導入することです。
これを導入すると、患者さんが予約を入れてクリニックを訪問することができます。また、自分の順番近くになるとスマホに通知を送ることができますので、患者さんはクリニックの待合にいなくても構いません。カフェなどで時間を潰してもらうことも可能です。いらいらしながら待合にいる必要がないので、患者さんにストレスをかけないのです。
また、今何番の人が診察を受けているのか、何人待っているのかなどの情報も送れますので、患者さんにより正確な待ち時間を知らせることが可能です。一番つらいのは待ち時間についての情報がないことです。待ち時間を明らかにすることで心理的な負担を減らすのです。
実際、ほとんどのクリニックが診療予約システムを導入することで患者さんの待ち時間、ストレスを軽減できています。
しかし、重要なのはクリニックに合った診療予約システムを導入することです。ここを間違うと、スタッフのワークロードが増えたり、かえって患者さんに負担をかけたりといったことが起こります。
選択のキーポイントは、
- 順番制
- 時間制
- 時間帯制
のどの「予約の仕方」をするシステムを選ぶかです。
順番制
いわば「早い者順」の予約型で、患者さんが予約を入れた順番に処理するシステムです。銀行などで番号札を取って、その順番に窓口に呼ばれますが、あれと同じです。予約を入れた順に患者さんが列をつくって並び、列の先頭から順番に診察室に呼ぶ――そんなイメージの予約システムです。
時間制
時間制では、例えば「○月△日14時20分~」といった予約の仕方になります。人との待ち合わせ、商談などの予約などと同じスタイルの予約です。予約時間がはっきりとしており患者さんにも分かりやすいですが、ずれたときが問題です。「予約した時間に診てもらえなかった」と患者さんが不満に思う可能性があります。
時間帯制
時間制よりも予約時間に幅を持たせた予約の仕方をします。例えば「○月△日の14時台」などの、ある意味ふわっとした予約になります。ただ、そのぶん患者さんも予約に幅をもって考えられますし、クリニック側もある程度は余裕を持って対処できます。この場合には、1時間に2人の患者さんを診る、といった設定で予約を受け付けます。
順番予約型に向いている診療所
一人当たりの診察時間が短くて済む診療科目の診療所は「順番予約型」のシステムに向いています。例えば「耳鼻咽喉科」や「皮膚科」などです。このような診療科目では、次々に患者さんをさばいていくため、早い者順に予約を入れられるシステムの方が合っています。
時間帯予約型に向いている診療所
患者さん一人当たりの診察時間が長めになり、読みにくいといった診療科目の診療所は「時間帯制」のシステムの方が向いています。例えば産婦人科や不妊治療、整形外科などは検査やリハビリなどの要素もあるため、幅をとって予約を入れられる時間帯制の予約システムを選択すべきです。
予約システムのメリット
予約システム導入のメリットは、まず患者さんの待ち時間を減らせること、心理的負担を軽減できることです。クリニック側のメリットとしては、それによって患者さんの満足度を上げられること、予約の自動化によってスタッフのワークロードを軽減できることが挙げられます。
また、予約システムの導入によって新規の患者さんが増える効果も見込めます。これはネット上に予約の導線ができることで従来の顧客以外の目に触れる可能性が広がるからです。
導入することによってコロナ対策ができる
先に触れたとおり、コロナ禍の最中で「三密を避けること」が求められていますが、診療予約システムの導入は感染対策にもなります。患者さんがどこにいても診察時間を知ることができますので、院内にいる時間を最小限にできるからです。
別記事でご紹介したことがありますが、予約システムの導入によって今までぎゅうぎゅうに混んでいた待合がガランとするようになった、というクリニックもあるほどなのです。患者さんが減少したわけではありません。待合にいなくても済むようになったからです。
不満を解決できる
患者さんの待ち時間を減らし、心理的負担を軽減できれば、上記のとおり「医療を受けた際の一番の不満」を縮小できたことになります。
さすがに待ち時間ゼロとまではいきませんが、診療予約システムの運用によって待ち時間を減らすことは可能です。クリニックの開業の際には最初から診療予約システムを導入しておくことをおすすめします。