クリニックの駐車場にEV用充電器を設置するコストは?
カーボンニュートラル、いわゆる脱炭素社会の実現を目指す取り組みが増えており、自動車も電気自動車(EV)が注目されています。日本でも走行する姿を多く見掛けるようになり、EV用の充電器の数も増えました。最近では駐車場にEV用充電器を設置しているクリニックもあります。これからの社会を考えると、開業時に設置しておくといいかもしれませんが、どれだけのコストがかかるのでしょうか? 首都圏をメインにEV専用充電器の設置を行っている、株式会社アイコム(エコカープロ)に伺いました。
最近では患者用として設置するケースが増えている
――EV用充電器を設置するクリニックは増えているのでしょうか?
すでに数年前から個人病院には数多く設置していますが、多くは院長先生が自分のEV用として設置されているケースです。ただ、ご自分が使わない時間は、患者さんにも使えるようにと開放されているところもあります。
――来院者が使用することを想定しての設置はどうでしょうか?
患者さん用として設置されるクリニックも最近では増えてきました。今後は、使える充電器があるかどうかで、その病院に行くかどうかを判断するケースも増えてくると思います。医療機関には1時間以上滞在する場合も多いため、EVユーザーとすれば、待っている時間に充電できるメリットは大きいといえます。
シンプルなタイプだと約8万円で設置可能
――充電器を設置する際のプロセスを教えてください。
まずは電話かメールにて問い合わせいただきます。その上で、訪問日程を決め、現場調査を行い、ご要望に応じたプランやより良い設置方法の提案を行います。現場調査を踏まえて見積もりをお出しするので、納得いただけたら契約、工事という流れになります。
EV用充電器の設置は国や自治体の補助を受けることもできます。交付申請書や実績報告書などを提出する必要がありますが、当社では補助金申請のお手伝いも行っているのでお申し付けいただきたいと思います。
――充電器を設置するにはどれくらいのコストが必要になりますか?
導入する機器や設置場所によって異なります。一般的なクリニックの場合は、戸建てと変わらない場合も多く、シンプルな「壁掛けコンセントタイプ」ですと、弊社の場合は7万9,800円[税別]から。ボックスタイプだと約14万~27万円[税別]。独立したスタンドタイプは約30万~50万円[税別]の価格です。大きい病院の場合は、配電盤からの距離が長い場合が多いため、これより費用がかかる場合が多いですね。
金額は配線距離が長くなると高くなります。当社ではホームページに金額を掲載していますが、いずれも配線・配管が15メートルまでの場合での基本工事費となります。小さいクリニックでしたらこの金額で大丈夫な場合も多いのですが、15メートルを超える場合は、1メートルあたり1,000円割り増しとなります。そのため、79,800円[税別]の工事の場合でも、配線の長さ次第で10万円程度になる可能性もあります。
他にも、追加の貫通工事やボックス取り付け、また太いケーブルが必要になる場合は別途費用がかかります。いずれにしても、現地調査をしてお見積もりを致しますので、まずはご相談いただければと思います。
設置の際には契約アンペア数に注意
――「この場合は設置が難しい」など、設置の際の注意点を教えてください。
例えば、昇降する機械式駐車場は充電中に動いてしまうと、電源ケーブルが切断される危険があります。そのため、機械式駐車場の設置はお断りしております。また、電気容量の契約が充電器に必要なアンペア数よりも低い場合は、そのままでは設置できない可能性もあり、電気容量の契約を変更してもらう必要があります。契約電気容量が低いと配線ケーブルが細いこともあり、太いケーブルへの交換費用が発生することもあるので、注意していただきたいです。
――設置後のメンテナンスなどで注意することはありますか?
弊社では、できるだけトラブルが起こらないように注意を払い工事をしておりますので、現状、配線や配管などのトラブルもなく、何年たっても充電器も頑丈に付いています。弊社では5年間という保証を付けておりますので、何か不具合などがあった場合は、無償にて迅速に対応します。
――ありがとうございました。
昨今増えているEV用充電器の設置について伺いました。クリニックの規模にもよりますが、シンプルな壁掛けコンセントのタイプだと約8万円からの金額で設置可能とのこと。EVは充電に時間がかかるため、こまめに充電できると助かります。クリニックで診察を受けている間に充電できるとなれば、来院する人も増えるかもしれません。開業の際には、EV用充電器の設置も検討してみてはいかがでしょうか?
取材協力:株式会社アイコム