クリニックで使用する「標榜科名」のルールとは?
クリニックの診療科目をどう標榜(ひょうぼう)するかは重要です。しかし、この「標榜科名」を自由に決めることは許されていません。広告などにも使われることを鑑み、誤解を与えないようにと『厚生労働省』が指針を出しているのです。今回はそのルールについてご紹介します。
「標榜科名」には基本4パターンがある!
「厚生労働省」により2008年(平成20年)4月1日から医療機関の標榜診療科名の見直しが行われました。この見直しを受けて、「日本医師会」では、以下の(イ)(ロ)(ハ)(ニ)の4つのパターンがあると説明しています。
(イ)内科
(ロ)外科
(ハ)内科または外科と以下の各事項を組み合わせたもの
a)部位、器官、臓器、組織またはこれらの果たす機能
b)疾病、病態の名称
c)患者の特性
d)医学的処置
※a~dの具体的な単語は下に記載しました
(ニ)単独の名称をもって診療科名とするもの。さらに、a~dの各事項との組み合わせも可能
参照・引用元:「日本医師会」「診療科名の標榜方法の見直し(2009年7月13日)」
同じ分類に属する単語をつなげてはいけない!
- (イ)の「内科」と標榜するのはOK。(ロ)の外科と標榜するのもOK。「内科、外科」と複数の診療科を区切って併用するのもOKです。
- 次に(ハ)です。分類a~dの具体的な単語は以下になります。「内科」 または 「外科」と、a~dの分類に属する言葉を組み合わせて使います。同じ分類に属する単語でなければ、2つ以上の単語をつなげても構いません。
例えば、男性(c)+心療(d)+内科で「男性心療内科」はOKです。
同じ分類に属する単語を2つ以上つなげるのはNGです。例えば、大腸(a)+肛門(a)+外科で「大腸肛門外科」は認められません。ただし「大腸・肛門外科」ならOKなのです。
a)部位、器官、臓器、組織またはこれらの果たす機能
頭頸部(けいぶ)、頭部、頸部、胸部、腹部、呼吸器、気管食道、気管、気管支、肺、消化器、食道、胃腸、十二指腸、小腸、大腸、循環器、肛門、血管、心臓血管、心臓、腎臓、脳神経、脳、神経、血液、乳腺、内分泌、代謝、脂質代謝、肝臓、胆のう、膵臓(すいぞう)
b)疾病、病態の名称
感染症、性感染症、腫瘍、がん、糖尿病、アレルギー疾患
c)患者の特性
男性、女性、小児、周産期、新生児、児童、思春期、老人、老年、高齢者
d)医学的処置
整形(内科との組み合わせは不可)、形成(内科との組み合わせは不可)、美容、心療(外科との組み合わせは不可)、薬物療法、移植、光学医療、生殖医療、不妊治療、疼痛(とうつう)緩和、緩和ケア、ペインクリニック、漢方、化学療法、人工透析、臓器移植、骨髄移植、内視鏡
- (ニ)は、単独の名称で診療科名とするパターンです。以下の名称を上記のa~dと組み合わせても構いません。例えば、男性(c)+泌尿器科で「男性泌尿器科」などはOKです。
精神科、アレルギー科、リウマチ科、小児科、皮膚科、泌尿器科、産婦人科、産科、婦人科、眼科、耳鼻いんこう科、リハビリテーション科、放射線科、放射線診断科、放射線治療科、病理診断科、臨床検査科、救急科
他に法令に根拠がないために標榜できない診療科名として以下が挙げられています。
女性科、老年科、新生児科、化学療法科、疼痛緩和科、ペインクリニック科、糖尿病科、性感染症科など
医学的におかしいもの、社会通念上おかしなものはNG
「日本医師会」では、内科または外科と(ハ)のa~dとの組み合わせ、あるいは(ニ)と(ハ)のa~dとの組み合わせの中で、医学的知見および社会通念に照らして不合理な組み合わせとなるもの、厚生労働省令で定める診療科名は標榜することができない、としています。
不合理な組み合わせとして以下のような例を挙げています。
- 内科で「整形」または「形成」
- 外科で「心療」
- アレルギー疾患アレルギー科
- 高齢者小児科
- 呼吸器皮膚科
- 頭頸部泌尿器科
- 男性産婦人科
- 腹部眼科
- 消化器耳鼻いんこう科
など
確かに科目によって、この単語と組み合わせるのはヘンというものがあります。字面は面白いですが、標榜できないのも当然で集患にもつながらないでしょう。
また、2008年4月1日の改正以降、以下の診療科名は単独の診療科名として標榜できなくなっています。
神経科、呼吸器科、消化器科、循環器科、皮膚泌尿器科、性病科、こう門科、気管食道科、胃腸科
まとめ
現在では、標榜科目にはこのようなルールが課せられています。クリニックの診療科名を標榜する際にはくれぐれもこの指針から外れないように注意してください。