クリニックをバリアフリー化するには?
クリニックを新たに建設する場合は、バリアフリーを考慮して設計することになるでしょう。しかし、既存のクリニックを承継する場合、バリアフリー化のために設備を追加したり、リフォームをしたりする必要が出てきます。では、クリニックのどの部分でバリアフリー化が必要になることが多く、工事費はどのくらいになるのでしょうか? クリニック向けのバリアフリープランを提供している『株式会社シンリョウ』に伺いました。
土足化も効果的なリフォーム
――事業承継で、新たに建物のバリアフリー化が必要になるケースは多いのでしょうか?
最近は「事業承継」を選択される先生が増えていますが、事業承継の場合は既存の設備や建物が古く、患者さまにとって使いづらい状態であるケースが少なくありません。患者さまにとって、先生の診察やスタッフの対応はもちろん、「通院のしやすさ」は非常に重要なポイントです。しかし、バリアフリー対応にしたいものの、「建物のどこをどう直せばよいかわからない」とお悩みの先生が多くいます。
――クリニックのどの部分にバリアフリー化が求められるのでしょうか?
患者さまが特に不便さを感じやすいのが「出入口」と「トイレ」です。例えば「バリアフリー化されていない出入口」では、
といった問題が起こります。
――段差があると、高齢者や体が不自由な人は大変ですね。
ひと昔前までスタンダードだった設備でも、今では患者さまにとって使いづらいものになっているかもしれません。出入口をバリアフリー化する場合、以下のような対応が考えられます。
手すりを設置する
階段は手すりを付けることで、高齢の方、足が不自由な方が上り下りしやすくなります。
スロープを設ける
車椅子の患者さまはスロープが必須です。ただ、スロープの新設には段差の高さにより必要な長さが決められており、対応できるスペースが必要です。「スペースが確保できない」という場合もありますが、簡易スロープという選択肢もあります。普段は収納しておき、必要なときだけ設置することができるので、スペースの問題を解決できます。
土足化
スリッパに履き替えることを不便に感じたり、衛生面を気にしたりする患者さまも多くいます。土足で院内に入れるようにすれば、車椅子でも楽に入れますし、靴を取り違えるトラブルも回避できます。
出入口に関してはこうしたバリアフリー化が可能です。
トイレの感染症対策も重要
――次に「トイレ」のバリアフリー例を教えてください。
足腰が不自由な人には使いづらい「和式便器」のみ、というクリニックも少なくありません。洋式でも、手すりがない、暖房機能や温水洗浄機能がないというクリニックもあります。トイレの充実度は、患者さまの満足度につながるポイントですので、改善可能な箇所は積極的に変えるべきでしょう。改善例として以下が挙げられます。
便器を和式から洋式に交換
便器を変えることで、患者さまの「使いやすさ」が格段に向上します。「予算の都合で大きい工事はちょっと……」という場合は、和式便器にアタッチメントを被せるだけで洋式便器にする施工もあります。
トイレの感染症対策
便座のシートクリーナーや手洗い場の自動水栓化は、使い勝手がよくなるだけでなく、感染症対策としても患者さまが安心して利用できる設備です。
ほかには、工事費が高額になりますが、オストメイト対応型トイレにするクリニックも増えています。ストーマを装着している患者さまにとって、オストメイト対応トイレは安心して通院できる重要なポイントです。
空調設備の見直しも大事なポイント
――ほかにはどのような点を改善すれば、患者さんの使い心地が向上するのでしょうか?
バリアフリーではありませんが、「誰しもが安心して通院できる」という意味で、空調設備も重要なポイントです。感染症対策で、窓やドアを開放して換気を行っているクリニックを多く見掛けます。しかし、夏は暑く虫が入り、冬は寒くて暖房が効かないといった問題があります。
例えば、最近では「換気ができるエアコン」があります。室内温度を保ったまま換気をすることができるもので、30万円[税込]からのコストで交換可能です。また、「全熱交換器・高性能換気設備」の導入も一つの方法です。全熱交換器は、換気によって失われる空調エネルギーの全熱を交換回収する省エネルギー装置のことです。高性能換気設備は、室内の空気を外に出すだけでなく「熱交換器」を搭載しています。新しい空気を室内に取り込むことができるため、室温を乱すことなく換気が可能です。こちらのコストはおよそ「25万円[税別]からので、1~2日あれば交換可能です。
――バリアフリー化以外にも注目すべき点が多くあるのですね。
バリアフリーといっても、ケースに応じてさまざまなアプローチがあります。そのため、「どこを直せばいいのか分からない」という人も少なくないのです。もし解決策が見つからないという先生は、一度患者さまの目線で院内の設備を使ってみることをお勧めします。「普段気に留めていなかったけど、意外に使いづらいな」と、新しい発見があるかもしれません。また、リフォームの実施内容によっては、国や地方自治体から補助金が給付される場合もあります。施工をご検討の際は当社までご相談ください。
超高齢化社会では、クリニックのバリアフリー化は必須です。過去にバリアフリー化を行ったという物件を引き継ぐケースもありますが、現在の基準に照らし合わせると設備が不十分という可能性もあるでしょう。患者さんが通いたいと思えるクリニックにできるよう、開業の際にはバリアフリー化も重要視してみてください。
※本記事に記載の価格・工期はあくまで一例です。施工内容、施工時期などにより変動致します。