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「2025年問題」のクリニック経営・医院承継への影響とは?

「2025年問題」のクリニック経営・医院承継への影響とは?

「2025年問題」のクリニック経営・医院承継への影響とは?

これからクリニックを開業するのであれば、「2025年問題」について知っておかなければなりません。また、承継案件で開業する場合には2025年問題が与える影響についても考慮する必要があります。

「2025年問題」について『デロイト トーマツ ファイナンシャルアドバイザリー合同会社』のシニアアナリスト、三枝真也さんにお話を伺いました。同社は「M&A」について豊富な経験を有し、医療分野についても深い知見を生かしたアドバイスを行っています。

「2025年問題」とは?

2025年には「団塊の世代」(1947~1949年生まれ)の全員が75歳以上の後期高齢者になります。この事実によって生じる種々の影響を一般に「2025年問題」といいます。

団塊の世代は人口が多いですから、保険診療に与える影響は大きくなります。そのため、2021年6月4日「医療制度改革関連法案」が可決されています。この法律は、保険診療における公的負担の増加を抑えるため、後期高齢者の負担を増やすという内容です。

現在、後期高齢者の保険診療では、現役並み所得者の窓口負担は3割、そうでない場合は1割です。

しかし、2022年10月以降は、単身世帯で年収200万円以上、複数人世帯で年収合計320万円以上の後期高齢者(75歳以上の人)に対して、窓口負担が現在の1割から2割に引き上げられます。

2022年10月~2023年3月に導入されるのですが、移行期間の3年間は1カ月当たりの負担増は最大3,000円以内に抑えられます。本格的にこの制度が運用されるのは2025年です。

これがまさに医療の世界における「2025年問題」なのです。

「2025年問題」がクリニックの経営に与える影響とは?

――2025年問題はクリニックの経営にどのような影響を与えると考えられるでしょうか?

三枝さん 人は年を取れば取るほど病院にかかる回数も増えますし、医療機関に支払う金額も大きくなります。『厚生労働省』の「医療保険に関する基礎資料~平成30年度の医療費等の状況~」によれば、年齢階級別の医療費は以下のようになります。

年齢医療費
0-4歳23.9万円
5-9歳13.1万円
10-14歳10.4万円
15-19歳8.2万円
20-24歳7.9万円
25-29歳10.1万円
30-34歳11.8万円
35-39歳13.1万円
40-44歳14.9万円
45-49歳18.0万円
50-54歳23.0万円
55-59歳29.0万円
60-64歳36.8万円
65-69歳46.4万円
70-74歳60.4万円
75-79歳77.0万円
80-84歳92.4万円
85-89歳105.4万円
90-94歳113.4万円
95-99歳118.9万円
100歳-118.6万円

――確かに75歳以降で急に高くなっているようですね。

三枝さん クリニックからすれば、言葉は悪いかもしれませんが高齢者の方は大きな売り上げを上げるお得意さまになります。しかし、2025年以降は窓口負担が2割に増えます。

――自己負担が一気に倍になりますね。

三枝さん 全体としての医療費は変わりません。しかし、医療保険制度が支援する率が減って、患者さんの自己負担は増えるのです。重要なポイントは、患者さんにとっては負担増ですが、クリニックにとっては売り上げが変化するわけではないという点です。

――どんな影響が予想されますか?

三枝さん 医療機関に行くのを控えることが多くなるのではないでしょうか。例えば、今回のコロナ禍によって診療控えが起こったことが分かっています。当社の調査によれば、約半数48%の患者さんが「なるべく通院は控えたい」と回答しています※。感染を避けたいという心理的な要因が医療機関に行くことを控えさせたのです。

2025年の改正によって、「負担が増えるから医療機関に行くのを控えよう」という心理になることが予想できます。すると通院回数が減り、クリニックの売り上げが下がると予想できます。

――なるほど。

三枝さん どれほどの影響があるかはふたを開けてみないと分かりませんが、しかし売り上げが弱含みになることを覚悟しておく必要はあるでしょう。

※「デロイト トーマツ グループ」「『コロナ禍での国内医療機関への通院状況・オンライン診療の活用状況』に関するアンケート調査結果を発表」2020年8月17日

https://www2.deloitte.com/jp/ja/pages/about-deloitte/articles/news-releases/nr20200817.html

「承継案件」に与える影響とは?

――承継案件で開業を考える医師も増えていますが、2025年問題は医療承継にも影響を与えるでしょうか?

三枝さん はい。2025年問題によって経営状態が悪化するクリニックが増えることが予想できます。医師・クリニック院長の高齢化、経営の悪化によって医療機関の承継案件が増える可能性があります。

――承継案件で開業を考える医師にとっても問題ですね。

三枝さん 医療承継の利点は投資コストが抑えられることです。また、過去の履歴が残っていますので、経営状態の判断もつきやすいのです。ある程度患者さんがついているクリニックであれば、ゼロから新規開業したクリニックのように集患についてのコストをかけなくても済みます。

しかし、先ほど述べたとおり、後期高齢者の患者さんが多い場合には売上が弱含みになる可能性があります。すると、これまでの履歴どおりの経営ができなくなるかもしれません。承継案件を選ぶ際にはそのクリニックに来院する患者さんがどのような人なのかなどを精査する必要があるでしょう。

――ありがとうございました。

2025年問題がクリニックの経営、承継に影響を与えるという点についてプロに取材しましたが、いかがだったでしょうか。2025年問題が実際にどれほど影響力を及ぼすかについては、2025年になってみないと分かりませんが、経営について影響があるものと考え、準備しておかなければいけないでしょう。また、これから開業する医師の皆さんは2025年問題についても考慮して承継案件を選択することをお薦めします。

取材協力:「デロイト トーマツ ファイナンシャルアドバイザリー合同会社」「M&Aプラス」

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