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クレーマー患者による精神的ストレス

クレーマー患者による精神的ストレス

クレーマー患者による精神的ストレス

病院やクリニックで働いているみなさんは、一度は「クレーマー患者」に遭遇したことがあるのではないでしょうか。クレーマー患者にも様々な種類があり、代表的なものとしては、以下のような代表例があります。

  • 威圧的で怒るタイプ
  • ネチネチと根に持つタイプ
  • 脅迫タイプ

実際にわたしが働いていた病院にも、かなり強烈なクレーマー患者がいました。

わたしたち看護師は、この患者の言動に日々頭を抱えていました。

その患者の特徴は以下です。

  • 理不尽な言動が多い
  • こちらの話は聞かず自分の要求ばかり
  • 気に入らないことがあるとところ構わず怒鳴る
  • いわば、クレーマーのモデルのような人でした。

本記事ではその患者からの言動によって、看護師たちが抱えていた精神的ストレスについてご紹介していきたいと思います。

クレーマーになった原因とは

見出しを見て、「クレーマーはもともとそういう性格なんじゃないの?」と思う方もいらっしゃると思います。

ですが、ここでのクレーマーとは入院患者。何か月も病院で生活をされている方たちということもあり、本人たちの心の状態もいつもとは違うことが考えられます。

具体的には以下のような要因が考えられるでしょう。

  • 薬の副作用によってクレーマーになっているかもしれない(幻視・幻聴が聴こえる場合もある)
  • 退院の目処が立たず、焦りが次第に怒りになったのかもしれない
  • 日々状態が変わっていく人(良くも悪くも)が周りにいるので、自分もどうなるかわからないという不安な気持ちが影響しているかもしれない

クレーマーといっても、病院内では患者であることは変わりないため、こうした背景にまで目を向けてあげることが大切です。

クレーマー患者になってしまった人たち

実際に、薬の副作用であったり、入院生活特有の焦りや不安などが原因でクレーマー患者になってしまったと思しき人もたくさんいました。

もちろん、「はじめからそういう人」という可能性もゼロではないかもしれません。

しかし、「相手は入院患者なのだから、薬や環境が影響していることも考えられる」と考えた方が、わたしたちも気持ち的に楽な部分がありました。

ただし、「入院生活中、ある日突然クレーマーのような言動をとり始めた」という場合は、入院による体調や環境の変化が要因だと考えてほぼ間違いないでしょう。具体例を紹介します。

みんな大好きAさん

Aさんプロフィール

  • 70代
  • 膝の手術済
  • 2ヶ月の入院中

Aは膝の手術後、私のいる病棟に転入してきました。

最初のころは、「いつも忙しそうで大変だね」「遅くまでお疲れさま」など優しい声かけをしてくださる方で、クレーマーとはほど遠いイメージでした。

転入からしばらく経ち、車椅子から歩行器、杖と徐々に歩けるようになると、担当医、リハビリスタッフを含めた全体のカンファレンスで、「トイレは一人で大丈夫」という判断がくだされました。

カンファレンスで決まった内容をAに伝え、了承をいただき、退院も目前と誰しも思っていました。

ADLが自立になった途端豹変

ところは、「トイレに一人で行っても大丈夫になって2日後の夜、彼は豹変したのです。

Aは、Aを含めて計4人の大部屋に居ました。

Aの隣に寝ているBは、夜間、無意識に奇声を発することもあれば、オムツをしていることから、夜中に何度か介助に入ることもありました。

そうした状況であっても、Aは何も不平をこぼすことがなかったので、わたしたちも気にせず介助に入っていました。

ところが、この夜、Aのナースコールが鳴ったので部屋に向かったところ、「いい加減どうにかしてくれ。毎晩これじゃろくに眠れやしない」Bに対してのクレームを言ってきたのです。

そのときは、いつも温厚なAが感情的になっている姿に驚きましたが、Aの言っていることも納得できたので、その日は、Aに一旦個室へ移っていただきました。

ですが、これは序章のすぎなかったのです。

ことあるごとにクレームを言うようにこの夜から、Aはことあるごとにわたしたち看護師に対してクレームを言ってくるようになりました。

個室に移ってもらった日の夜も、「通常でしたら個室料金が発生しますけど、今夜だけは一旦移動ということで特別に」と説明したはずなのに、「Bのせいで毎日寝不足なのになぜ料金を払う必要があるのか? 個室料金を請求するかわりに、Bを個室に移せばいいだろう」と言ってきたのです。

Bの家族も経済的に苦しく個室では難しいことをAに伝えると、「じゃあ別の病院に移せばいい話だろう」とまで言ってくる始末。あまりの傲慢さに唖然とさせられました。

その後、理由があるとはいえ無料で個室を使うのはおかしいということで、退院までの間、特別に大部屋をA一人で利用してもらうことになりました。

これで丸く収まったと思いましたが、クレームはさらに悪化してしまったのです。

大きな部屋に一人だけ、しかも身体の状態的にあまり手がかからないということもあり、スタッフは用があるときくらいしか入室していませんでした。

そのことに対してAは、「わたしを除け者にしてるのか」「誰も部屋に寄り付こうとしないじゃないか」「これはれっきとした虐待だ」などと不満をこぼすように。挙句、特に用もないのにナースコールで呼び出し

ことあるごとに看護師に対してクレームを言っていました。

結局、もう歩行も安定しているし退院させていいとのことで、半ば強制的にAには退院してもらいました。

Aがクレーマーになってしまった原因がBとは限りませんが、実際この手の話は結構頻繁にあるため、看護師たちも慣れているのが正直なところです。ですが、その後、A以上にストレスを与えてくるクレーマー患者に出会ってしまったのです。

クレーマー患者の言動で精神的ストレス

Aのようなクレーマー患者はよくいるので、そこまで気に病むレベルではありません。

ですが、これから紹介する患者はケタ違いのレベルでした。

はじめは温厚で優しい人

Bのプロフィール

  • 70代
  • 男性
  • 労災で入院

Bは、人当たりもよくごく普通の入院患者の一人でした。ですが、労災の入院期限となる1ヶ月を切った頃、Bは徐々に変わっていったのです。

ある日の夜勤、午前0時を回ろうとしていたとき、Bがナースステーションへやって来ました。

いつもは眠前薬を飲むと朝までぐっすり眠るBなので、どうしたのかと尋ねると、「夜勤の看護師さん全員の名前教えてくれる?」と急に言われたのです。

夜勤スタート時に看護師が各部屋へ挨拶に行っているはずなのに、なぜ今改めて聞きに来たのか不思議でした。夜勤者の名前を伝えると、Bはすんなりと部屋に帰っていきました。

そして次の日、本来は他の病室への入室は禁止になってるのですが、Bが別の男部屋にいるところを見かけたのです。

仲間作り

Bが入っていった部屋にいたCも、気さくで看護師たちとよく世間話などする人でした。BがCたちの部屋を去ったあと、さり気なくCに何を話していたのか聞いてみました。

すると、なんとBは看護師の名前と特徴をノートにびっしり書いており、「◯◯という人は〜だから気をつけたほうがいい」というふうに看護師たちの悪評をC達に伝えていたといいます。

私はとにかくびっくりしましたが、その後、冷静になってから、Bに夜勤者の名前を聞かれた日のことを思い出し、これに使うためだったのかと納得しました。

その後も、C達をはじめいろんな患者にそのノートに書いてある情報を言いふらし、共感者=仲間作りをしていました。

看護師の行動を監視?

それからというもの、Bは別人のようになり看護師たちの行動をチェックするようになりました。

  • 部屋へ入るときの言葉、ノックの回数
  • 薬を持っていく時間の指定(分単位)
  • 退出時のカーテンの閉め方、閉じる位置
  • Bが部屋にいないときは理由が何であろうと入室してはいけない

これらにミスを犯していないか、Bは看護師たち一人ひとりの行動をチェックしているBは、まるで看護師を監視しているようにも見えました。

その日の受け持ち看護師が、上記の項目のうち1つでもできていないと、「この人は二度とわたしにつけるな、他の看護師と変えてくれ」と言うようになりました。

わたしはあまり受け持つことがなかったのでそこまでクレームを言われたことはありませんでしたが、同僚の看護師は「もう嫌。患者とはいえなんでそこまで言われなきゃいけないの」と愚痴をこぼしていました。

限界、休職届を提出?

Bの言動は日に日に悪化していきました。

理不尽、威圧的、こちらの話は聞こうともしない。Bの退院日までは最低限の接触で良いとされ、わたしたち看護師も胸を撫でおろしていました。

1時間置きにナースステーションへ

最低限の接触ということになって以降、看護師が自分のところに頻繁に来ないことに気付いたBは、自分からナースステーションまで来るようになりました。

  • それもひどいときは1時間置きに。
  • お風呂のお湯が熱かった
  • 食事の内容がおかずにならないものばかりだった
  • パジャマの着心地が悪い
  • 廊下を歩く音がうるさい

などあげたらキリがない程のクレームを言いに来ていました。

そのときは退院まであと1週間を切っており、みんなあと少しの我慢と思って協力して対応していました。

部屋から廊下を盗撮?

退院まで1週間を切ったある日、いつものようにBは、コールでその日の受け持ち看護師を呼び出して何かを言っている様子でした。

内容は、「いつまで経ってもわたしの言うことがあなたたちに伝わらないので、動画を撮影して知り合いの記者に送らせてもらう」というものでした。

ここでことを荒立てると余計にBが暴走してしまうと思い、細心の注意を払い業務をすることになりました。

Bは発言通り、自分の携帯を使って部屋から廊下を撮影していました。

個人情報の問題もあるので、他の患者の顔は映さないようにとだけ伝えてなんとか乗り切ろうといました。

もう限界、精神的苦痛で休職届を提出

撮影するようになって数日が経ったころ、また理不尽な内容で看護師Dがクレームを言われていました。

Dは前々から、Bに対して病院が具体的処置をとってくれないこと、その状況にみんな我慢してまで働いていることに不満を持っていました。

その日DはBから、「君みたいな人がよく看護師になれたね」と言われたそうです。

その言葉でDは限界に達したようで、次の日、師長から、「Dは2ヶ月程お休みすることになりました。理由は伏せておきます」と申し送りがありました。

DはBの退院前日に休職届を提出したとのことで、よっぽどもう我慢できないところまで来ていたんだなと感じました。

その後、Bは何事もなかったかのように「みなさんには本当にお世話になりました」と言って退院していきました。

まとめ

ここまで悪質なことはめったにありませんが、看護は人相手の仕事のため、クレームとは切っても切れない関係です。

看護師Dのように、日々の積み重ねで精神的に限界を迎えてしまう人も今まで何人も見てきました。

限界になるまで自分の中に溜め込まないことが1番ですが、ストレスというのは知らない間に溜まっていることも多々あります。それを防ぐためにも、意識的に自分の気持ちや思いを周囲に相談したり、意見交換したりすることは医療の現場ではとっても重要です。モヤモヤすることがあった時点で、ぜひ勇気を出して周囲に打ち明けていただきたいと思います。

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