看護師の部署異動

看護師の部署異動

私は、総合病院の外科病棟で働く看護師です。総合病院のため、部署異動があり、数年に一度は、他の病棟への異動があります。今回は、看護師の部署異動について、実際の周りの医療スタッフの声や私の体験をもとに紹介していきます。今回の記事が、より良い病院運営に繋がればと思います。

看護師の部署異動

総合病院や大学病院などの規模の大きな病院では、さまざまな科の病棟が院内に入っているため、それに伴い、看護師の部署異動があります。看護師歴10年弱の私も異動経験があるため、異動を経験した立場で今回、異動についての体験を紹介していきます。私の病院では、年に2回、大きな異動があり、この異動で各部署に看護師が出入りします。異動の理由は人それぞれ。自分で異動を希望する人や他の部署で退職したスタッフなどがいた際に、同じような年代で即戦力になりそうな人を異動させ、病棟の人員を確保することもあります。

異動は看護部の話し合いで決まるため、よっぽどの理由がない限り、断ることが難しいです。異動の理由がどのようなものであっても、異動の声がかかったスタッフは、働き慣れた部署を異動することに対して寂しさを感じたり、新しい環境に適応できるのか不安に思ったりするものです。私も異動の声がかかったときは不安になりましたし、実際に異動して新しい環境に慣れるまで1年ほどかかりました。その科特有の疾病の勉強や看護技術を身につけなければいけない他、新しい人間関係も構築しなければいけないことが大変でした。今となっては、異動したことがスキルアップにも繋がり、結果的に良かったと思えますが、異動した当初は本当にストレスでした。

部署異動のメリット

部署異動のメリットとしては、私自身も感じていることですが、キャリアアップに繋がることが一番大きいです。同じ看護師の仕事でも、科によって全くやることが異なります。例えば、内科系の病棟で働いていれば、化学療法をおこなっている患者さんが多く入院しているため、抗がん剤投与の技術や知識が身に付きますが、外科系の病棟では、抗がん剤投与をおこなうことは滅多にありません。逆に、外科系の病棟で働いていれば、術前後の早い展開での看護技術や外科的知識が身に付きます。

入院している科によって患者層も異なるため、対応も違ってきます。外科系の病棟では、手術を受けたあとには、ADLを落とさずに元気に退院することが目標になることが多いため、術後から割とスパルタでADL拡大を促すことが多いです。しかし、内科系の患者さんだと、終末期の患者さんが多いため、できるだけ苦痛に感じないように援助をしていくことが多いです。

手術室で働いた経験がなければ、機械出しの技術や術中の医師の援助の方法はわかりません。透析室に行かなければ、透析の機械を回す技術も身に付きません。一口に看護と言っても、その科での特有のものが多い点が非常に大変です。

逆に言うと、さまざまな科を経験していれば、オールマイティーに動ける看護師に成長します。同じ部署にずっといる看護師よりも、異動経験者の方が知識の量も豊富であるため、アセスメント能力も高くなります。

このように、部署異動は1人ひとりのスキルアップに繋がり、キャリア形成になります。異動後にさまざまな技術や知識を覚えることは大変ですが、覚えてしまえば、自分の糧になると言えます。

また、異動することでマンパワー不足を解消し、パワーバランスを調整することができます。退職したスタッフが多い部署での人員確保に繋がり、人間関係も新しいものになりますので、病棟の雰囲気が良くなるといったメリットもあります。

部署異動のデメリット

部署異動にはたくさんのメリットがあることがわかりましたが、逆にデメリットもあります。部署異動のデメリットとしては、異動を命じられた本人のストレスが大きいことです。例え、希望での異動であったとしても、「次の部署でうまくやっていけるのか」「新しい職場の人間関係に馴染むことができるのか」など、人それぞれ不安があり、全く不安のない状態で異動を迎える人の方が少ないです。

今まで積んできたキャリアはありますが、異動先によっては、今まで経験したことのない看護分野の知識を有する部署もあります。そのため、気持ち的には「1からスタート」といった感じで勉強しないといけなくなることが多いです。

人間関係に関しても1から構築していかなければいけないため、他のスタッフに気を遣い、慣れるまでは大変になります。最初は名前を覚えることから始まり、物の位置すらわからない状態のため、何をするにも今までになかったストレスを感じてしまうものです。環境の変化に適応できなかった場合には、精神的なストレスから体調を壊し、中には辞めてしまうスタッフもいます。望まなかった異動の場合には、モチベーションが低下してしまい、やる気を失くしてしまうスタッフもいます。

このように部署異動は、スタッフの立場から見ると、負担が大きいということがわかります。病院側から見るとメリットも大きいですが、人員確保のための部署異動で、逆に辞めてしまうスタッフが増加するのでは本末転倒になってしまうため、しっかりと話し合い、異動を検討していく必要があります。

異動先でうまくやっていくコツ

私の病院では、部署異動が当たり前のようにあるため、私を含めてたくさんのスタッフが一度は異動を経験しています。私個人や周りのスタッフの意見をもとに、異動先の病棟に早く馴染む方法について紹介していきます。

まず、常識的なことですが、気持ちの良いあいさつをしっかりおこなうことです。あいさつは、人間関係構築の基本になりますのでぜひ、明るいあいさつを心がけてほしいと思います。年齢問わず、あいさつがしっかりとできるスタッフは信頼が厚い人が多いです。

また、私自身も経験したのですが、同じ看護技術でも部署によってやり方が異なったりすることが多いです。最初は、「あれ?」と戸惑うことも多いかもしれませんが、そこは確認しながら、ローカルルールを参考にしていく必要があります。新しい職場のやり方に慣れていくことも必要となります。

また、最初は仕事自体にも慣れず、普段はスムーズにできていたことにも時間がかかってしまったり、何かとうまくいかなかったりすることもあります。慣れるまでは、戸惑い、マイナス思考になってしまうこともありますが、休日に仕事から離れてリフレッシュするなどして、心身のバランスを整えていくことも大切です。女性の職場のため、ときには周りから陰口を聞かされたりすることもあるかもしれませんが、聞き役に徹し、うまく流すなどして対応し、敵は作らないような無難な対応をしていく必要もあります。

精神的に一杯一杯のときは、短絡的にしか考えることができず、辛いこともあります。しかし、長い目で見ると、異動をすることでさまざまな技術や知識が身に付き、さらに人間関係構築のスキルも上がるため、プラスになることがたくさんあります。異動と聞くと、不安に思う人がほとんどですが、前向きに考えることも大切です。人生においては、たくさんの経験をした方が、考え方の視野が広がり、その後の生きる糧になると思います。

理想の医療現場

私の考える理想の医療現場は、異動してきたスタッフに対してのサポート体制が整っており、少しでもストレスなく、新しい職場に適応できるような環境です。異動者はさまざまなストレスや不安を抱えているため、そのことを配慮して、コミュニケーションを取りやすいような職場の雰囲気作りや教育体制が必要であると考えます。

異動したスタッフが働きやすい環境を以下にまとめます。

  • 声をかけやすい雰囲気
  • ローカルルールが少なく、院内共通のマニュアルを徹底している
  • 異動者用の業務マニュアルがしっかりとしている

今回の記事が看護師の異動について考えるきっかけとなり、今後のより良い病院運営に繋がればと思います。

お役立ちコラムピックアップ

【医師の診療科ランキング】年収1位は脳神経外科。勤務時間は?

【医師の診療科ランキング】年収1位は脳神経外科。勤務時間は?

医師のエリートといえばどの診療科?さまざまな角度から考察してみた

医師のエリートといえばどの診療科?さまざまな角度から考察してみた

医療事務の平均年収とは

【医療事務の年収事情】契約形態毎にご紹介

オンライン資格確認 顔認証付カードリーダー 徹底比較

顔認証付きカードリーダーの特徴・機能比較

コロナで人と会えない孤独を救うインターネットは、入院患者にとって絶対必要なもの

9月末までの申請で、国の予算で自院に患者用Wi-Fiを導入できる!