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患者からのクレームに繋がる看護師の接し方

患者からのクレームに繋がる看護師の接し方

患者からのクレームに繋がる看護師の接し方

看護師のみなさんは、今まで患者からクレームを受けたことはありますか? クレームに繋がる接し方の中には、「言葉遣いや態度が悪い」「対応の仕方に問題がある」などこちら側に否がある場合を想像される方が多くいらっしゃると思いますが、それに全く当てはまらず理不尽なことでクレームに繋がることもときにはあります。

私も実際、理不尽なクレームを受けたことが1度だけあります。本当に誠心誠意患者のためにおこなっていたことでクレームを受けたので、非常にショックだったことを覚えています。私のように真摯に患者に寄り添っていてもクレームに繋がることはあります。中には、心当たりがありクレームに繋がった方もいるかもしれませんが、どちらにせよクレームとは双方とも気持ちがいいものではありません。ここでは、私が実際に経験したクレームに関してご紹介したいと思います。

危険行動の多い患者

私のように無自覚でいつの間にか患者に不快な思いをさせてしまい、クレームに繋がるケースは意外と多いです。まずは、知らない間に私たちがやりがちな患者への接し方についてご紹介します。

危険行動の多い患者への接し方

これは、実際に私が患者から受けたクレームの話です。私は当時、度重なるインシデントで神経質になっていました。そんなとき、ある患者を受け持つことになりました。患者Aは認知症もあることから、1度伝えたことであってもすぐに「そんなことは聞いていない、初めて聞いた」といなってしまうことが日常茶飯事でした。

Aは歩行状態も不安定で常に見守りが必要な方でしたが、認知症も相まって何度「どこか行きたいときは呼んでください」と言ってもすぐに忘れてしまうため、他病棟に居た頃から何度も危険行動や転倒歴などさまざまなインシデント歴がありました。何度言っても堂々巡りであるのならば、常に最善の注意を払うしか方法はないとそのとき思いました。私のいる病棟に転棟してきてからも、転倒や他病棟への徘徊など数え切れないほどのインシデントが起きていました。正直、看護師みんなどうすれば良いのかわからない状態でした。

あるとき、Aを2日連続で受け持ったときの話です。Aは認知症特有の怒りっぽいところがあり、気に入らないことがあると怒鳴ったり無視したりすることがよくありました。受け持ち初日にAの部屋へご挨拶に向かうと「若いのに偉いね、宜しく」とみんなから聞いていたAのイメージとは正反対の声かけをしていただき、驚きましたが幸先のいいスタートが切れたと少し安心しました。

神経質な見守りが逆効果

Aはとにかく常に動いていないと落ち着かない様子。病室でじっとしていることはほとんどありませんでした。ですが、転倒歴など過去の数々の危険行動からセンサーマットをつけることが一番の予防策となり装着することになりました。私は、Aのセンサーがなると誰よりも早く訪室することにしたため、はじめはAも「急いでどうかしたのかい?」と穏やかな様子で特に問題行動なく過ごしていましたが、段々と状況は変わっていったのです。

これは医療現場で働いたことのある方なら理解していただけると思いますが、センサーなどをつける患者の多くは、「センサーを付けられている自覚がない」もしくは「自覚はあるがどのようなものかなぜつけられているかまでは理解できていない」患者がほとんどです。稀にセンサーの存在や意味を理解して激怒しだす患者もいます。Aもその1人だったのです。

Aのセンサーが鳴ると私は一目散に訪室するようになっていたため、次第にAは私の行動にストレスを感じ始めたのか、センサーの存在にも気づくようになったのです。

センサーが鳴るとなるべく一番早く訪室しようと心がけてはいるものの、A以外にも受け持ちの患者がいることから、すぐには行けないことも多々ありました。Aのセンサーが鳴り、助手の1人が代わりに訪室してくれたときに事件は起こりました。

届かない思い

助手がAのところに向かうと、Aはすでに廊下まで出てきており、慌ててAのもとに行くと、

「君たちは私のことを監視してるのか!」と怒鳴られたそうです。そんなつもりは毛頭なく、その発言に助手は驚いたそうですが、とりあえず危険なのでベッドに座っていただくように促してくれました。そのタイミングで私が遅れて訪室すると、興奮気味のAと対応に困っている助手の姿がありました。そこで、助手には退室してもらい、Aの話を聞くことにしました。

A「なんで君たちは私が動こうとすると急いで来るんだ」

私「前の病棟でもこちらも病棟にきてからも何度も転んだりけがをされたりしているので、みんな心配で来ているんです」

A「こんなに自分で歩けるのに転ぶわけがないだろう! この病院は刑務所みたいに患者を監視するのか!」

このように、Aは自分が転んだことは覚えておらず、自分は普通に生活しているだけなのに何度も様子を見に来る私たちの行動が非常に不快だと言っていました。その日はなんとか説得することができましたが、他の看護師がAの受け持ちになったときもこのようなやり取りが何度かあったようです。そんななか、ある看護師がAの見ているところでセンサーのスイッチを触っていたことが原因で、Aはセンサーの存在に気づき、さらに私たちに不信感を抱くようになりました。私たちの「転んでほしくない、ケガして退院が遠のいてほしくない」という思いがAには届かないことが何よりも精神的にショックでした。

家族に報告

私たちの日頃の行動、センサーの存在、いつになったら退院できるのかとAのストレスはピークに達していました。センサーが鳴ることで私たちが訪室することに気づいたAは、センサーに対して非常に神経質になっており「今すぐそれを外せ!」とまで言うようになりました。Aが怒ったときは目の前で外し、落ち着いたころにまた装着するといった日々が続きました。

ある日、Aから珍しくコールがあり訪室すると「家に電話するから公衆電話に連れてってくれ」と興奮気味に言われました。日頃は洗濯物や必要物品などの件で看護師の方からご家族に連絡を取っていたので、A本人が電話したいと言ってきたのは初めて。私たちが連絡していることを知らないのかと思い、「何か持ってきていただきたい物とかありますか? 私から連絡しておきますよ」と言うと「いいから早く連れて言ってくれ!」とさらに興奮し始めたので連れていくことにしました。

離れるのは危険なためAの近くにいると「電話の内容まで聞かれるのか。つくづく刑務所みたいな病院だな」と言われたので、Aの目に入らない少し離れたところで見守ることにしました。20分ほど会話して急に私に電話を変わるようAから言われました。すると、「いつもお世話になっていますAの妻ですが、主人があんなに興奮しているのは珍しくて……そちらの病院はどのような対応をされているのでしょうか?」とAの奥さんに言われたのです。家族の言うことを信じるのは仕方のないことですが、Aのキーパーソンは娘さんでAに関しては基本的に娘さんを通して連絡をとっていたので、奥さんはAの現状などほとんど知らない状態でした。

奥さんもAと同様認知症ということもあり、急にAから電話がきたことでパニックになり、Aの言葉をそのまま受け止めて病院に対して非常に不快感を持っている様子でした。奥さんは、ご主人が元気に帰ってくるとばかり思っていたため、ご主人が認知症であること、頻繁に転ぶほど筋力が落ちていることを何度説明しても、「それはあなた方の注意不足なんじゃないんですか? 主人は頭も足腰もまだしっかりしています」と全く聞き入れてもらえませんでした。

やるせない気持ち

完全に奥さんは病院に対して悪い印象を持ち、頻繁に病棟に電話をしてくるようになりました。一連の流れを娘さんにも説明して、「両親が大変ご迷惑をおかけしてすみませんでした。母の方には私から連絡してやめさせるように言っておきますので」と理解していただきとりあえず安心しました。その後も、A本人から心無い言葉を浴びせられ「ただ転んでほしくない、無事に退院してほしいだけなのに」と看護師皆みんなやるせない気持ちでいっぱいでした。

退院の日、娘さんは止めたそうですが、奥さんも行くと聞かなかったようで奥さんもお迎えに来られていました。奥さんはその日の受け持ち看護師に開口一番、「ここの病院は他の患者さんにも主人にしたような対応をしているんですか? それで退院したら終わりと思っているんですか?」と言っていました。娘さんも止めに入っていましたが、Aも応戦。「院長呼んで来い。知り合いの新聞記者にこの病院のこと全部書いてもらうからな!」といつにもまして興奮していました。

もちろん院長が来られるはずもなく主治医が来てくれることになり、一通り話を聞いたあと謝罪しましたが、「Aさんがこうして無事退院できてご家族にお会いできたのも、毎日懸命に看護してくれた看護師たちのおかげでもありますのでご理解していただけると幸いです」と私たちの味方になってくれました。「何にもしてもらった覚えはない! この病院は医者までだめだな!」と言って退院していきました。後日、娘さんから謝罪の電話がありましたが、正直思い出したくない出来事でした。

クレームに繋がる接し方

次は、理不尽な理由ではなく「それはクレームを言われても仕方ないね」を感じるような接し方をいくつかご紹介して終わりたいと思います。

余裕のなさが原因で……

忙しく働く中で余裕が無くなってしまうことは誰にでもありますよね。でもそれは相手には関係のないこと、人対人の職種であれば特に気をつけなければいけないことでもあります。ですが、その気持ちをコントロールできず、患者に対して失礼な接し方をしてしまう方が中にはいます。

コミュニケーションをあまり取らない

忙しく余裕がないことから、看護師が患者とのコミュニケーションが希薄になり、助手の方が患者のことを知っているなどよくあります。そのようなとき、たまにしか話さない相手から「(薬や自己処置など)~してください」など急に言われると、患者は命令されているような気持ちになり、クレームに繋がることがあります。このようなことを防ぐためにも、日頃からきちんとコミュニケーションをとり信頼関係を作ることが重要になってきます。

命令口調

余裕がないとつい、業務を終えなくてはいけないとばかり考えてしまい、いつの間にか命令口調になってしまうことがあります。こちらの言い分としては「決まった時間だから薬を飲んでほしい、処置をしてほしい」だけなのですが患者側になって考えると「~してください」といわれるより「そろそろ~の時間なので~しましょうか」という風に少し言い方を変えるだけでもだいぶ気持ちも違ってきます。これは無意識にやってしまうことが多いので充分に注意が必要です。

過剰な心配

これは私が受けたクレームの内容に関連することでもありますが、心配されすぎることでストレスを感じたり、逆に「自分はそこまで悪い病気なのか」と落ち込んでしまったりする患者もいます。医療現場で働いていると「大丈夫ですか?」という言葉をよく耳にすると思いますが「お変わりないですか?」などこれも少し言葉を変えるだけでもクレームを回避できますので、意識していただきたいポイントです。

まとめ

医療現場では、余裕のなさによる接し方や、私のように理不尽な理由でクレームに繋がることが非常に多いです。冒頭でも言いましたが、クレームとは双方気持ちのいいものではないので、相手への思いやりを意識しつ続けることが重要だと感じています。

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