クリニックと薬局の理想の関係は?
クリニックを開業したら、院外処方の場合は特に、近隣の薬局と良好な関係を保つことが必要です。では、薬局との理想の関係を保つためにはどんなことが必要なのでしょうか? さっそくみていきましょう。
薬局と密に付き合うことになる「院外処方」の割合はどのくらい?
クリニックを開業するにあたって、院内処方にするか院外処方にするかで悩むドクターもいるかもしれません。しかし、2022年度の診療報酬改定によってリフィル処方箋が導入となったこともあり、国としては、それぞれの患者への薬の重複処方などを防止して服薬コンプライアンスを高めるためにも、さらに院外処方を推進していく可能性が高いでしょう。
では、現状のクリニックの院外処方率はどのくらいかというと、厚生労働省が公表している「令和2年社会医療診療行為別統計の概況」によると、2020(令和2)年のクリニックの院外処方率は76.3%です。2016(平成28)年からの5年間の推移を見ても右肩上がりなので、このまま大きな診療報酬の改定などがなければ、今後はさらに院外処方率が高くなるでしょう。
【クリニックの院外処方率】
2016(平成28)年 | 2017(平成29)年 | 2018(平成30年) | 2019(令和元)年 | 2020(令和2)年 |
72.8% | 73.8% | 74.8% | 75.7% | 76.3% |
参照:厚生労働省「令和2年社会医療診療行為別統計の概況」より「医科の院外処方率の年次推移」
2016年までのクリニックと薬局の関係
では、これまでのクリニックと薬局はどんな関係にあるべきとされていたかというと、「双方が経済的、機能的、構造的に独立している」のが原則でした。具体的には求められていたのは以下の条件を満たしていることです。
経済
資本や資産の提供を受けず、賃貸借関係を持っていない
機能
役員や雇用関係がかぶっておらず、薬局、クリニック間でそれぞれの開設者や役員同士が三親等の関係性にない。また、会計処理を連結していない
構造
それぞれが構造的に分離していて、一方から他方への誘導設備、設備の共有がない。また、薬局入口は公道に面している
2016年10月以降のクリニックと薬局の関係
上記条件を満たしていないと判断された場合、指導が入り、それでも改善されなかった場合は、薬局の保険医療機関としての指定が更新されなかったり取り消されたりすることがありました。しかし、2016年10月1日、薬局と医療機関の独立性にまつわる規制が一部緩和されて、医療機関の敷地内に薬局を開設する「敷地内薬局」が認められるようになりました。なぜ緩和されることになったかというと、2014年10月、「医療機関と薬局とがフェンスなどで隔てられていると、身体が不自由な人や車椅子を利用する人、高齢者にとっては大変だから改定してほしい」との声が行政から上がったから。これをきっかけに規制緩和が決められたことで、敷地内に薬局を誘致する動きが活発化することとなったのです。
2022年からのクリニックと薬局の関係
規制緩和に際して、敷地内薬局には、そうでない薬局の調剤基本料と比べて点数が低い「特別調剤基本料」が設定されましたが、特別調剤基本料の対象とならないよう様々な策を練る薬局が続出。その結果、2021年には、日本医師会から「構造上、同じ敷地内にあるものはすべて敷地内薬局にするなどの対策を取るべき」との声が上がります。
これを受けて、令和4年度(2022年度)診療報酬改定では「特別調剤基本料」の点数も改定。これまでの「処方箋の受付1回につき9点」から、「処方箋の受付1回につき7点」へと減点されることとなりました。
参照:厚生労働省保険局医療課「令和4年度調剤報酬改定の概要」p.33より一部抜粋
クリニックと薬局の理想の関係は?
こうした経緯を踏まえたうえでクリニックと薬局の理想の関係を考えると、癒着があることは結果的に双方にとって大きなデメリットとなることがわかりますが、距離的に離れていたりフェンスなどで隔てられていたりすると、患者にとってのデメリットが大きくなるのも事実です。
これから開業するにあたって土地やテナントを探している段階なら、その点も考慮したうえで、ベストな場所を選びたいものです。物件探しの段階で周辺のクリニックの位置や評判も確認して、うまく連携を図ることができそうかどうか、多方面からチェックしてみてくださいね。