困った患者への対応

困った患者への対応

私は総合病院の外科病棟で働く看護師です。日々多くの患者さんと接しているなか、時には困った患者さんが入院してくることもあります。今回は、私や一緒に働く看護スタッフの経験をもとに、患者さんへの対応について考えたいことを紹介していきます。今後の患者さんへの対応の参考になれば幸いです。

困った患者さん

どの職場でもそうだと思いますが、良い患者さんもいれば、時にはクセの強~い困った患者さんもいるものです。医療現場で働いていれば、1度はそんな患者さんの対応に苦労した経験があると思います。私も、年に数回入院してくる困った患者さんの対応にストレスが溜まり、頭を悩ませることがあります。患者さんの前ではニコニコとしていますが、Nsステーションはそんな困った患者さんの愚痴であふれがち。看護師の裏の顔は本当にこわいものです(笑)。実際の事例について次の章で紹介いたします。

看護師と医師で対応を変える患者さん

私の病棟に実際に入院していた困った患者さんについて紹介します。その患者さんを仮に佐藤さん(仮名)とします。佐藤さんは循環器の既往症がある70代男性で、透析の経験もあります。今回は手術のために入院となりましたが、元々入退院を繰り返しており、入院慣れしている患者さんです。このときは消化器内科で入院していましたが、手術のために外科病棟に転棟してきていました。消化器内科の看護師からの申し送りの際は、「こだわりが強く、対応に注意が必要な患者さん」との情報がありました。

転院したその日から、さっそく受け持ち看護師から「聞いてくださいよ~」と不満の声が。看護師に対する態度が悪く、まるで奴隷のように扱ってくるとのことです。「お前たちの給料は私の入院費からでているんだろ。それくらいしろ」といった感じです。

一般的に高齢者は入院による筋力低下が著しく、数日ベッド上で生活しただけでも歩行できない程、筋力が弱まってしまうことも多いです。それを防ぐためにも、患者さんが自分でできることは自分でしてもらい、動ける機会まで看護師が奪わないようにしています。看護師が手助けすれば早いのですが、それでは患者さんのためにならないからです。そのようなことはつゆ知らず、佐藤さんは看護師に自分のできることまで頼み、目の前にあるものまで看護師に取らせる始末です。

しかも、なんと看護師の目を盗んで喫煙までしていたのです。基本的には、病院は全面禁煙で喫煙スペースはありません。喫煙することで術後の回復も悪くなり、肺炎などの合併症を起こすこともあります。しかし、佐藤さんは看護師の目を盗み、外に喫煙しに行きます。たまたま見つけてそれを止めても、看護師を振り払って行ってしまうような人でした。

そんな佐藤さんですが、医師の前では看護師への対応とは全く異なり、ペコペコしています。年配者は亭主関白な人が多く、女の人を軽視している人も中にはいます。この典型的な例でした。病院では、看護師に横柄な態度を取ることでストレス発散できるのか、退院は拒み、できるだけ長く入院していたいといった考えの人でした。医師から強制退院の指示が出ればもう自分は入院していられなくなるので、医師に対してはとても丁寧な口調になるのです。

医師の協力

看護師ではもう手に負えないため、主治医に相談しました。医師の前ではとても丁寧な口調になる佐藤さんに対して主治医は、「あの佐藤さんが……?」といった反応でした。主治医は、患者さんの管理も看護師の役割だと言い、対応を看護師に任せっきりにしていました。主治医では話にならず、もっと上の先生に、看護スタッフみんなで今までの経過などを説明したところ、「僕から患者さんに説明します」と即答。翌朝の回診で患者さんに、「看護師は私たち、医師の指示で動いています。そのため、看護師の言うことは医師の言うことだと思って聞くようにしてください。みんな佐藤さんが早く治るように佐藤さんのことを思って対応しています。これからは、看護師の言うことが守れないのであれば、もううちの病院ではみられなくなりますから」と厳しく、佐藤さんに説明してくれました。その後は、佐藤さんの横柄な態度はなくなり、看護師に対して強く当たることもなくなりました。

今回の件で、患者さんのことを想えば、時には厳しいことばも必要であることを実感しました。面倒な患者さんと関わりたくないことはわかりますが、真正面から向き合ってきちんと説明すれば、伝わるのだと感じました。看護師がいくら注意してもきかない患者さんにとって、医者の存在や医者のことばは、本当に大きなもので、影響力の強いものです。看護師にとってこのような医者は、本当に頼りがいのある存在です。

理想の医療現場

私が考える理想の医療現場とは、困った時にはお互いに支え合える職場です。もちろん看護師同士でも困ったときにはサポートし合っていますが、例え職種が異なっていてもお互いに協力し合えるような体勢が整っていれば、より良い医療を患者さんに提供でき、患者さんにとっても満足のいく結果となります。

そのため、多職種間でもお互いの意見を尊重し、強みを発揮して働いていけば、医療チームの団結力も強くなり、働きやすい環境になると思います。「困ったときはお互い様」ということばがあるように、その職種でしか発揮できない強みもあると思います。今回はその例が医者と看護師の関係でしたが、これは他の職種でも当てはまることだと思います。看護師の言うことをきかない患者さんにとって、医師の説明や医師の指導は本当に心強いものです。薬のことは薬剤師が一番知識を持っているので、患者さんに説明するときも、看護師よりも薬剤師が頼りになりますし、食事のことは栄養士、といった感じです。お互いに協力して、患者さんが早く回復できるようにサポートしていければと思います。

今回の記事が患者さんや多職種への対応について考えるきっかけとなり、今後のより良い医療に繋がればと思います。

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