患者の待ち時間短縮のためにどんな対策がとれる?
医療事務としてクリニックに勤めていると、一番と言っていいほど患者さんに聞かれる質問があります。それは、「待ち時間はどれくらいですか?」です。
この問いに、こちらとしては曖昧にでしかお答えができません。
なぜなら、当事者である私たちにも把握できていないからです。特に混雑している状況では、どうなるかが読みづらいです。予約している患者さんでさえ、1時間以上待たせることもあるのです。
完全予約制にすれば、ここまでお待たせはしないのかもしれません。ただ、急患の受け入れ態勢を整えているクリニックでは、完全予約制を導入するのは難しいかと思います。
とは言え、クリニック側は待ち時間を少しでも軽減できるよう対策しなければなりません。
少しでも患者さんへのストレスを減らすらめにも、待ち時間対策は私たちの課題でもあります。
今回は待ち時間対策を、私の見解からになりますがご紹介できたらと思います。
はじめに
待たせてしまうクリニックと、待てない患者さん。
そのどちらにも、理由があります。まずは双方の理由についてお伝えします。
クリニック側の理由
クリニック側はなぜ待ち時間がかかるのでしょうか。総合病院よりはクリニックのほうが待ち時間が少ない印象ですが、それでも混雑時では2時間以上待たせてしまうこともあります。
なぜそんなに時間がかかるかというと、一人ひとり丁寧な診察をすればするほど、必然的に待ち時間がかかってしまうのです。
診察によっては、検査や処置が必要になる患者さんもいます。
そして、予約の患者さんや緊急を伴う患者さんについては優先的に診察をするため、予約外の患者さんはお待ちいただくことになるでしょう。
患者さん側の理由
人気レストランやテーマパークでの待ち時間は平気でも、病院になると変わってきます。
日常の合間をぬって受診される患者さんにとって、長い待ち時間は決して楽しいものではありません。
仕事やそのほかの予定がある患者さんが、予測していない急な体調不良によって受診されることもあります。カラダに不調があって受診されているのであれば、早く診てほしいと考えるのは当然ですよね。そして、長時間いることで他の病気をもらいそうで怖いと感じている方もいらっしゃいます。
クリニック側としては、待たせてしまう事情を理解してほしい気持ちは少なからずあります。ですが、患者さんに理解してもらう前に、まず対策をとることの方が大事であると考えます。
待ち時間短縮の対策
待ち時間をできるだけ短くする対策として、私の見解では、以下の方法が考えられます。
- 電子カルテの導入
- 問診システムの導入
- 自動精算機の導入
- 複数の診察室を活用
- スタッフの増員
電子カルテの導入
現在では、電子カルテを取り扱っているクリニックが多く見受けられます。
紙カルテのメリットもあるかと思いますが、できることに限度があり、電子カルテに移行するクリニックも多いです。問診の結果や診療経過を記録するだけではなく、患者さんの予約管理や会計、オンライン診療などにも活用できます。
電子カルテを導入することで、カルテを探す手間が省けるメリットや、字が読みやすくなるメリットがあり、業務の効率化が図れます。
問診システムの導入
初診の患者さんや久しぶりに受診される患者さんには、問診が必要になります。
問診システムとは、タブレットやスマートフォンから患者さん自身で入力してもらい、電子カルテと連携させるものです。
問診システムを導入することで、問診での対応時間やカルテに入力する際の時間の短縮が可能になり、入力漏れもなくなります。
自動精算機の導入
総合病院では、よく見かける自動精算機。
最近では、新しく開業するクリニックで導入されることもあるのではないでしょうか。
診察の会計を、すべて患者さん1人でおこなえます。
自動精算機を導入することは、会計の時間短縮につながります。金銭の受け渡しミスもなくなることも利点かと思います。
複数の診察室を活用
複数の診察室を活用することで、診察時間の効率化が図れます。事前に別の診察室で、患者さんに脱ぎ着等をしていただくことで、準備の時間が短縮されます。
薬のみ希望の患者さんにも、先にもう一つの診察室で待ってもらうことでスムーズなやり取りが考えられるのではないでしょうか。
スタッフの増員
クリニックごとに、必要になる人数は異なります。私の印象では、看護師3人、医療事務3人というクリニックが多いように思えます。
それぞれがその日の役割を決めることで、スムーズに業務をこなせます。
落ち着いている時間帯ではこなせる人数であっても、混雑時には回せないこともあります。
そういった日が続く場合には、スタッフの増員も視野に入れてみることも良いのではないでしょうか。
待ち時間を快適に過ごしてもらうために
患者さんに待ち時間を快適に過ごしてもらうために、当クリニックもさまざまな対策をしています。待ち時間が退屈だと、より長く感じさせてしまうこともあるでしょう。待ち時間のイライラを軽減させることや、少しでも体感時間を短くする工夫を取り入れることも、私たちの課題です。
現在では、大型テレビでニュース番組や映画を流したり、無料Wi-Fiやウォーターサーバーを設置したりといった工夫をしています。ウォーターサーバーだけではなく、お茶やスポーツドリンク等を選べるドリンクサーバーを設置しているクリニックもありますね。
その他には、デジタルサイネージを導入して、院長のプロフィールやクリニックの方針などの情報も提供しています。初めて来院される患者さんに、待ち時間を利用してクリニックを知ってもらうことで、少しでも安心を届けられると考えています。
「待ち時間はどれくらいですか?」の問いには、
「予約外の患者様のなかでは、〇〇番目です」
「今ですと、だいたい〇〇分くらいみて頂けたらと思います」など、数値化でお伝えすることで納得されることが多いです。
最近は、順番案内表示システムを導入しているクリニックも増えてきました。
患者さんの診察の順番案内を液晶ディスプレイパネルに表示します。待ち時間が長時間になると、忘れられていないか不安になる患者さんもいます。
こういった案内を表示することで、待ち時間の把握や、診察順番の問い合わせが減少することが期待できます。
患者さんによっては、自分の番が来るまで外出される方や、車で待っていたいとおっしゃる方もいます。
外出される場合には、受付終了時間には戻って来るようにお願いしています。そして戻った際は必ず声をかけてもらうよう伝えます。駐車場内でお待ちいただく場合にはゲストぺージャー(呼び出しベル)をお渡しして、時間になったら呼び出しをし、院内に入ってきてもらいます。
こうした対策や工夫があれば、少しは快適な時間を過ごせるのではないかと思います。そして患者さんの待ち時間の体感時間を短くさせることができ、不安や不満を軽減できるのではないでしょうか。
まとめ
今回は、待ち時間を短縮する対策と、患者さんに快適に過ごしてもらえる取り組みをご紹介しました。
長い待ち時間は、患者さんによってはイライラの原因になり、クレームやトラブルにもなりかねません。待ち時間をゼロにすることはできなくても、少しでも短くするための対策や工夫をすることで、クリニックの満足度は上がります。
ただ、コストの関係や院内スペースなどの事情もあり、全てを利用するのは難しいかと思われます。しかし、少しでもできることを対策することで、患者さんの満足度は向上し、問い合わせやクレームなどを減らせるはず。
患者さんのストレス、そしてスタッフの負担を軽減のため、できることから取り入れてみてはいかがでしょうか。