ガウンを手に固まる医師。その衝撃の理由とは?

COVID-19の影響で、以前よりも格段に装着の機会が増えたPPEですが、みなさんは正しく着脱することができますか? 毎日着ていても、正しい着脱手順は説明できないという人は多いのではないでしょうか。そこで今回は、PPEの着脱にまつわるエピソードを紹介します。
PPEとは?
コロナ禍を経験した今、ほとんどの医療関係者はPPEをよくご存知かと思いますが、まずはPPEの定義と目的を今一度一緒に確認しましょう。
PPEとは”Personal protection equipment”の頭文字で、日本語にすると「個人用防護具」。診療や治療を通して、患者さんの血液または湿性生体物質に触れる可能性がある場合、使用を徹底することが求められています。主たるPPEとしては、ガウン、手袋、マスク、キャップ、エプロン、シューカバー、フェイスシールド、ゴーグルなどが挙げられます。
PPE装着は、医療従事者らが自らを感染から守るための大切な手段。しかし、正しい手順で装着できていなければ、十分に身を守ることができない場合もあります。たとえば、ガウンひとつとっても、ただまとうのではなく、「装着手順」を守っているに越したことはありません。
今回はせっかくPPEについてのネタをご紹介させていただくので、本題のエピソードについてお話する前に、実際に「正しい装着手順/正しい脱着手順」として紹介されている装着/脱着の手順も記しておきましょう。
ガウンの正しい装着手順
- PPEを装着前に手指衛生(手洗いや擦式アルコール消毒剤の擦り込み)をおこないます。
- 着用するときは袖を先に通して、首の後ろのひもを結びます。
- 腰の後ろのひもを結び、その後、手袋を着用します。
- 手首が露出しないようにします。
引用元URL:https://www.safety.jrgoicp.org/ppe-3-usage-gown.html
工程の中で特に大事なのが4番目。せっかく皮膚の露出を防ぐためにガウンを着ていても、手首は隠れていない方が多いそうです。
ガウンの正しい脱着方法
続いては脱衣手順です。
- 外すときには、首の後ろのひもを解き、腰のひもを解きます。
- ガウンの外側は汚染しているため、端を持つか、袖の内側からすくい上げるようにして手を引き抜きます。
- 汚染面を中に畳み、小さくまとめて廃棄します。
- PPEを脱いだ後は手指衛生をおこないます。
引用元URL:https://www.safety.jrgoicp.org/ppe-3-usage-gown.html
着脱に慣れているみなさんも、この機会に改めて確認していただくと何か発見があるかもしれません。
ガウンを手に固まる医師。その理由は……?
それでは、本題のエピソードをお話しましょう。COVID-19が流行し始めて一年近く経ったある日の、発熱外来での話です。
わたしが働いている病院の発熱外来は、各診療科の医師が日替わりで担当していました。わたしはそこで医師の診察介助をしていたのですが、その日の担当は総合内科の先生。院内のなかでも責任ある立場の、やさしい年配の先生でした。
事件が起きたのは、COVID-19疑いの患者さんが外来にやってきて、対応するためにPPEを装着することになったとき。
看護師がPPEを装着し終えてもまだ着ていない先生。訝しみながら着用を促すものの、先生は手に持ったガウンを見つめたまま固まっています。「どうしました?」と聞いたところ、申し訳なさそうに返って来た回答はなんと……
「どうやって着たらいいのか分からない」。
予想だにしなかった言葉に自分の耳を疑いました。ですがよくよく考えてみると、先生は入院患者の主治医はされておらず、侵襲的治療をすることはほとんどないため、PPEを着る機会が今まであまりなかったのかもしれません
一緒にいた看護師と共に先生に手順を説明しながら、ふたりがかりでPPEを装着させていただきました。フェイスシールドも逆側から被ろうとしていて驚いてしまいましたが、何とかその日は乗り切ることができました。ちなみに先生はその後、「ありがとう。ちゃんとマニュアル見とくね」と言って帰っていきました。
あなたのPPEの着脱手順は大丈夫?
その後、先生が自分で装着できるようになったかどうかは分かりませんが、着られるようになっているのなら、お伝えした甲斐があったのでうれしいですね。
PPEを着る頻度は医師によって差があるかと思います。しかし、普段着る機会が少ない方でも、COVID-19が大流行しているご時世ですから、突然必要となる場面も出てくることでしょう。いつでも正しい手順で着脱できるように心がけて、感染症から自分自身の身を守りましょうね。