看護師の性格がきついと言われがちなのはなぜなの?

一般の人の中には、看護師のことを「白衣の天使」と呼ぶ人もいます。
ですが、実際に関わってみると、優しい看護師もいれば、性格がきついと思う看護師もいたという経験はないでしょうか。
私は看護師として働き始め、一度も看護師のことを「白衣の天使」と思ったことはありません。
なぜ、看護師がそのように言われるのかがわかりませんでした。
患者さんからすれば、いつも笑顔で、優しく声をかけてくれて、頼めば対応しくれる。
このようなイメージから「白衣の天使」と思うのかもしれません。
ですが、実際の臨床を知るとそんなイメージは吹き飛ぶでしょう。
そもそも、看護師はストレスの塊みたいな状態です。
医者や先輩看護師、患者やその家族などと関わるうち、少しずつストレスが蓄積されていくのです。
働いていく中で、患者が元気になって退院していくことは医療従事者にとってもうれしいことです。
しかし、その過程においてすべてスムーズにいくわけではありません。
医療従事者側からすれば、理不尽なこともたくさん対応していかなくてはならないのが現実です。
そんな環境の中で毎日働いていれば、考え方や捉え方が変化していくのは当然といえるでしょう。
看護師に多い性格
私は看護師として働いて10年以上になります。
先輩から後輩まで、たくさんの看護師と関わってきました。たくさんの看護師を見てきて思うことは、「看護師として働き始めると性格が変わる人が多い」ということです・
一番性格が変わったことがわかりやすいのが、新人のときから知っている看護師です。元を知っているだけに、変化がわかりやすいのです。
自分自身も含め、変わったなと思うこととしては以下のようなことが挙げられます。
- 気が強くなる
- 落ち込むことが少なくなってくる
- お金の使い方が荒くなった
- ファッションに気を使わなくなってくる
- 勉強をするようになった
- 要領がよくなる
- 曖昧な理由は認めなくなる
では、この一つひとつの変化の理由を具体的にみていきましょう。
気が強くなる
看護師は、患者さんの命や健康を守るため、時に厳しく指導することが必要です。
しかし患者さんの中には、こちらの注意を全くきかず、自分勝手に何でもおこなってしまう人もいます。
そのため、場合によっては患者にも厳しく対応しなければならないのです。
また、看護師は医師や先輩看護師からたくさん怒られます。
そのため、精神力も強くなってきます。
新人のときには毎日泣いていた後輩も、経験を重ねるうちに泣く回数は減り、今では怒られても全く動じないぐらいになっています。
辛かったことをたくさん乗り越えていくと、自然に強くなっていくのです。
落ち込むことが少なくなる
若いときには、ミスをして先輩看護師に怒られたり、患者さんに酷いことを言われたりするたび、落ち込んでいました。
しかし、何度も繰り返していくうちに対処方法がわかってきたり、精神的にも強くなってきたりするため、相当なことがない限り落ち込みにくくなってきます。
また、人の生死に関わる責任感から、心が揺さぶられることも少なくありません。
しかし、最初は落ち込むことや引きずることがあっても、次第に引きずる時間は短くなってきます。
医療現場という特殊な職場環境に慣れていくと、精神的に強くなってくると言えるでしょう。
お金の使い方が荒くなった。
看護師は一般企業で働く人に比べて給料が高い傾向にあるかと思います。
また、シフト制になるため、休日や祝日といった日は関係なく、平日休みもたくさんあります。
そのため、人混みをさけてプライベートを楽しむことができます。
また、看護師は夜勤もしますが、朝方になると妙にアドレナリンが分泌され、夜勤明けでもそのまま遊びにいったり、おいしい物を食べにいったり、旅行したりとお金の使い方が荒くなってくるのです。
また、ストレス解消のために浪費したり、現実逃避するために旅行したり、頑張った自分へのご褒美として大量に買い物をしたりするといったこともよく耳にします。
この癖が治らず、結婚してからも浪費してしまうといった人も少なくありません。
ファッションに気を使わなくなってくる
看護師は、基本的に仕事中は白衣を身にまとっています。
出勤してもすぐに白衣に着替えてしまうため、出勤時の服装にもあまり気を使わなくなってきます。
特にこれは、車通勤者に多い傾向にあります。
電車などの交通機関を利用していれば、まだ人とすれ違ったり、友人や知り合いに会ったりする可能性もあるため気を使いますが、車通勤になると人に会うことは少なくなります。
中には「それパジャマ」って思うぐらいラフな格好で来る人もいるぐらいです。
看護師は朝早くから夜遅くまで働いており、家と病院の行き来だけになってしまうため、あまり気を使わなくなってくるのかもしれません。
女性の化粧にしても例外ではありません。
病院などでは、ナチュラルメイクでないと注意を受けることがありますが、プライベートでするようなメイクはしてこない傾向にあります。
また、動き回って汗などでメイクが崩れたりすることや、朝はギリギリまで寝ていたいという理由からノーメイクでくる人もいます。
偶然プライベートで会ってしまったときには、声をかけられるまで全くわからないこともあるぐらい、職場での見た目と違うのです。
勉強するようになった
看護師の仕事は専門性が強いため、どうしても知識や技術が必要になってきます。
そのため、日々積み上げていかなくてはなりません。
大の勉強嫌いで中学、高校と全く勉強せず、部活にのめり込んでいた私でさえ、専門学校に入学以降、看護師として働き始めてからも毎日勉強しているのです。
そうでもしないと、最先端の医療にはついていけず、質の高い看護が提供できないと感じたからです。
医学で身に着けるべき知識は膨大です。
毎日どんなに勉強しても常に進化し続けています。
どんなにキャリアを積んだとしても、勉強はし続けないといけないのが現実です。
要領がよくなる
看護師の仕事をしていると要領が良くなってきます。
限られた時間の中で、考えて行動をしないと仕事が終わらないからです。
常に頭の中にタイムスケジュールを立て行動するため、すでに習慣化されています。
このスケジュール管理は、日常生活にも現れてきます。
やりたいことや優先順位を考え、効率的に無駄な時間を過ごさないようにスケジュールを立てます。
病院では、綿密にスケジュールを立てて行動していても、思いがけない緊急入院、手術、急変、ナースコールなどがあり、その都度組み直していくことになります。
しかし、日常生活ではそういったことがないため、スケジュール通りに過ごせたときには、とても爽快な気分になることもあります。
曖昧な理由は認めない
看護師は常に根拠に基づいて仕事をしています。
「なぜ、それをやらなくてはならないのか」「なぜ、それが必要なのか」「なぜ、そのような症状がでているのか」など、何をおこなうにしても「なぜ」を考えることが大事です。
そのため、仕事以外でも、「大丈夫でしょう」「たぶんね」「だと思う」といった曖昧で根拠がない言葉に対しては、「何が?」「何で?」「その根拠は?」と言いたくなってしまうのです。
私 も注意していますが、これを看護師以外の人に行なってしまうと、単なる嫌な人になってしまうため、口には出さないようにしています。
これは職業病の一種なのかもしれません。
看護師という職業が性格を変えてしまう
医療現場という環境ゆえ、看護師は常に気を張りつめた状態で働いています。
その結果、徐々に強くなっていくことはあるでしょう。
私自身も、看護師として働きだしてから、性格が変わった1人だと思います。
以前であれば、人を叱るなんてことはできませんでした。
それが、例え間違っていることであっても、相手のプライドを傷つけないように振る舞っていたこともありました。
しかし、それではまた、同じミスを繰り返します。
「あのとき、もっとしっかりと指導をすればよかった」と後悔することもたくさんあります。
指導をすることは、患者に悪影響を与えない、同じことを繰り返さないようにすることでもありますが、その人自身を守るためでもあります。
そのため、ときには厳しく指導することも大切になってきます。
厳しく指導するより、優しく指導する方が楽です。
しかし、優しいだけでは、事の重大さに気づかないこともあります。
何かが起きてからでは手遅れです。
そうならないためにも、どこかで自分自身が変わっていくしかありません。
指導だけに関わらず、さまざまな場面で「自分が変わるしかない」と心に決めた経験がある人も多いはずです。
それを繰り返しいくうち強くなり、自分自身の性格も変わっていったのだと思います。
変わるのは悪いことではありませんし、良いこともあります。看護師として働くようになり、人との関わりが多くなったことで、「性格が明るくなった」「コミュニケーション能力があがった」「外出をする機会が増えた」などの変化もありました。
また、上記でもあげたように「勉強をするようになった」「勉強したいことが増えた」「要領が良くなった」など自己啓発の良い機会になっていることもあります。
看護師としての素質
看護師になって性格がきつくなったと感じる人も多いかもしれません。
しかし、精神力の強さやはっきりと物を言うことなどは看護をおこなう上でとても大切。
「看護師という職業に就いたから性格が変わってしまった」とマイナスに捉えるのではなく「変わることができた」とプラスに考えれば、性格がきつくなったという考えはなくなってくるかもしれません。