院内消防訓練でやらかした!本当に非常ベルを鳴らしてしまったその後
わたしが働いている病院では、一年に1回院内防災訓練があります。わたしは看護師になって2年目の院内防災訓練で、非常ベルを鳴らす係になりました。事前に渡されていた台本通り非常ベルを押しました。すると周りのみんながびっくり! 非常ベルは押す”フリ”で良かったのです! 押してはいけない非常ベルを押してしまった後の院内のドタバタ劇をお伝えします。
非常ベルを押してしまうまで
運命の任命
訓練は病棟から数名ずつ参加して病院全体でおこないます。実際に建物内で火事が起きたことを想定したデモンストレーションをおこなった後に、地域の消防署の方が説明や演習をしてくれます。病棟の科の主任部長が防災訓練全体をまとめる担当であり、わたしを可愛がってくれていたことから、面白がってわたしを非常ベルを押す係に任命しました。わたしは、簡単だけどやたらと目立つな、しかし若者の宿命だろうからしょうがないと思っていました。
実際に押してはいけなかった
いざ当日になり、問題なく研修はスタートしました。わたしは台本通りに火事を発見し、非常ベルを押しました。カンカンカンと非常ベルが鳴り響きました。すると、近くで見守っていた看護部長が急いで近づいてきて「これは本当に押してはいけないのよ」と青ざめていました。そこでわたしは非常ベルを押すのはフリだけでよく、実際に押さなくてよかったことに気づきました。振り向くと、同じように青ざめた先輩看護師らがたくさんいました。そしてわたしを任命した主任部長は面白がって笑っていました。
色々な対処が必要に
走る看護部長
看護部長が防災室に連絡し、先ほどの非常ベルは誤作動であることを館内放送してもらうように依頼してくれました。館内放送が流れると、本来は防災訓練を見守る役割であった看護部長は、外来の混乱などを把握するために走っていってしまいました。ふくよかで年齢を重ねられた看護部長が駆け足しているのを初めて見ました。
患者さんが大慌て!
病院スタッフは今日防災訓練がおこなわれることを把握しており、実際にそれぞれの病棟からもスタッフが訓練に参加していたため「本格的にやっているなあ」と思う程度で、驚くことはなかったようです。しかし、何も知らされていない入院患者さんは非常ベルが鳴り響いていることに驚いて、歩ける人は病室から出てきて大慌てだったそうです。わたしの病棟では、自分で座位への移動ができない患者さんが危険を感じたのか、いつもは出ない力をふり絞ってスッと起き上がって座っており、スタッフが驚いたということがありました。
長期入院中の方は「どうせ誤作動だろ」
長期入院中の方や入退院を繰り返している方は、初めから誤作動か間違って押したとわかっているようで慌てた様子はなかったそうです。院内の煙感知などの防災設備の誤作動があり、ベルが鳴った後に問題が発見されなかったという放送が流れることに数回遭遇していることから、また誤作動だろうと感じていたようです。
難聴の患者さん
難聴の患者さんには、非常ベルの音は聞こえるけど、そのあとの誤作動の放送は聞こえないため、怖い思いをさせてしまいました。「非常ベルは聞こえるけどそのあとの放送が聞き取れなかった。わたしはどこに避難したらいい?」などと、ナースステーションに放送の内容を聞きに来られる方が多かったそうで、とても申し訳なかったです。
発生報告書の記載
これは当院だけのことかもしれません。ハリーコール(特定の医師ではなく早く来ることができる医師を呼ぶ放送)や防災設備の誤作動、そして病院史上初の非常ベルが鳴った今回などの館内放送を行ったあとは、その事態に至った経緯やその後の対応などを発生報告書として記録して提出しなければならないという決まりがありました。その記録は、わたしを任命した主任部長の医師が引き受けてくれました。
防災訓練は無事終了
わたしが実際に非常ベルを押してしまい、主任部長や看護部長には大きな迷惑をかけてしまいました。外来や入院患者さんにも大きな不安を与えてしまい申し訳ないことをしてしまいました。防災訓練はというと、非常ベルを押すことを含め(!)台本通りに進み、防災の意識をもつことができました。翌年以降は台本に非常ベルを押す(フリでよい)と付け加えられているそうです。10年ほど経った今でも、主任部長から新人看護師へ伝え継がれる話になっています。