新人時代に医師にしてもらって嬉しかったことベスト3
医師のみなさんは、共に病院を運営していく仲間である看護師とするうえで、よりよい関係を築くために、日々、腐心されていることかと思います。特に、何も言わなくても察することができるベテラン看護師と比べ、右も左のわからない新人看護師とのコミュニケーションは大変だと感じることも多いかのではないでしょうか。
しかし、看護師の立場からすると、何もわからない新人だからこそ、積極的に意思疎通を図ってもらえることで安心できるもの。実際、わたし自身もそうでした。新人時代、先輩の厳しい指導についていけず、涙に濡れた日々を過ごしていたわたしの心の支えとなったのも、医師のみなさんのやさしい心遣いやあたたかな言葉でした。
そこで今回は、わたしが新人時代に医師のみなさんにしていただいてうれしかったことベスト3を紹介します。ぜひ、新人看護師と接するときの参考にしてみてください。
落ち込んでいるときに励ましてくれる
新人時代は毎日のように落ち込んでいました。理由は、「失敗して先輩看護師に怒られた」「患者さんとうまくコミュニケーションをとることができなかった」「思っていた以上に動けない自分が情けなくて辛くなった」など、挙げればキリがありません。誰もいない病室やケア準備室に隠れてこっそり涙を流したこともあれば、出勤するのが嫌過ぎて眠れない夜もありました。
そんななか、医師がそっと「大丈夫?」と声をかけてくれたことが何度かあったことを覚えています。その言葉だけで心がスッと軽くなって、泣いてばかりいないでがんばらないと! と思い直すことができました。
なかには、話を聞いてくれて、一緒に改善策を考えてくれた先生までいました。心底うれしかったですが、もちろん、そこまでのことを求めていたわけではありません。責任ある仕事を任されている以上、辛くてもやり遂げないといけないことはわかっています。ただ、忙しい業務の最中、少し気にかけてくれた、声をかけてくれたという事実がうれしいのです。毎日辛いことばかりではあるけれど、自分を見てくれている誰かがいるということが、本当にうれしかったことを覚えています。
ですから、もし新人看護師が落ち込んでいるところを見かけたら、ひとことだけでも声をかけてあげてほしいです。あなたにとっては些細なひとことでも、声をかけてもらった側からすれば、自分の存在を肯定してもらえたような、素敵な言葉に聞こえるかと思います。
疾患や薬理、ME機器について尋ねられると教える
新人看護師は知識や経験が十分ではありません。わからないことがあれば、専門書やネットで調べるなどして日々の業務にあたってはいるものの、それだけでは不十分なこともあります。
たとえば、カルテに記載されている疾患名や病態を知識として知っていても、血液データや画像データを読み取って患者さんの状態を把握することまではできません。薬品に関しても、薬品単体の薬理や適応、禁忌は知っていても、どんな症状の患者さんの治療に使われるかまで説明することは難しいです。また、ME機器に関しては、学生時代にまったく触れたことのない新人看護師も多いのではないかと思います。わたし自身、新人時代は急性期病棟に勤めていたこともあり、「看護師はこんなにもたくさんの機械を扱わないといけないのか!」と四苦八苦していました。
自分で調べてもどうしても分からないとき、一番に相談するのは先輩看護師です。しかし、先輩看護師が何でも知っているとは限りません。先輩看護師がわからないときは、患者さんの主治医に聞くことがあります。そのとき、順序だてて詳しく教えていただけると本当に助かります。
正直、どんな教科書よりも、患者さんの実際のデータに基づいて説明してくださる、各診療科の専門家である医師の説明が一番わかりやすいです。看護師は、医師のみなさんにとっては当たり前のことを質問してくることもあるかもしれませんが、簡単にで構わないので答えていただけると大きな助けになります。
ちなみにわたしは、新人時代だけではなく、経験を積んだ看護師になってからも、わからないことがあれば医師に聞いています。もちろん、自分自身でもできる限り調べることは大前提ですが、それでもわからない場合もあるのです。また、質問などのコミュニケーションを通して、チームとして医師のみなさんがどのような意図を持って患者さんに関わっているのかを知ることができれば、よりよい医療の提供に繋がるのではないかと思っています。
処置のときに呼んで、説明しながら手技を見せる
これをしてくれたときは本当に驚きました。
しかも、わたしの受け持ちではない患者さんに手技を施す際に、「〇〇は見たことある? 今から〇〇するから見る?」と声をかけてくださったのです。実際に私はその手技を見たことがなかったので、立ち会うことができるだけでも充分勉強になりました。驚かされたポイントはそれだけではありません。なんと、手技をおこないながら手順を説明して、観察のポイントや注意点まで教えてくださったのです。これは、本当にかけがえのない学びの機会になりました。あのときのことは感謝してもしきれません。
前述した通り、知識があったとしても、それを臨床で役立てるとなると難易度が高くなります。特に手技は、ビデオを見たりマニュアルを読んだりしていても、実際にやってみると大概できません。さらには、手技に立ち会う機会もそうそうないため、できるようになるかは運任せでもあります。
ですので、私に声をかけてくれた先生がそうしてくれたように、受け持ちでない患者の手技を見せてもらえるのは、新人看護師にとってまたとない好機なのです。しかもリアルタイムでの解説付き。大変理解が深まりました。
この先生がしてくださったことを他の方にも求めるのは、難しいとはわかっています。しかし、もし自身の患者さんの受け持ちが新人看護師だったら、手技のときに一声かけてもらえたらとても助かるということはぜひ知ってほしいです。そうすれば、初めてのときは介助に入れないかもしれませんが、2回目以降は介助に入れるようになるでしょう。
新人時代に医師に教わったことは大きな糧になる
新人看護師は決して即戦力ではありませんし、臨機応変に動くことも困難です。医師のみなさんにとって、最初のうちは手がかかって面倒な存在かもしれません。しかし、ベテラン看護師とは違い、経験がないまっさらな状態だからこそ、経験からくるこだわりや思い込みが少なく、マニュアルや医師の指示を遵守して行動することができます。そう考えると、彼らを医師の力になってくれるよう育てることも楽しく感じられるのではないでしょうか。
反対に看護師の立場からすると、初めて働いた職場で関わった医師が教えてくれた知識や経験は、キャリアの土台となります。そして、そのとき医師のみなさんが思いやりを持って接してくれたことは、その後、仕事を続けるうえでも心の支えになるものです。辛いことの多い新人時代ですが、みなさんのちょっとした心遣いで助けられる看護師はわたしだけではないはずです。
もちろん、医師のみなさんが日々恐ろしい量の業務をこなす多忙な身であることは重々承知しています。しかし、心にゆとりがあるときだけでも、新人看護師にやさしく接していただければうれしく思います。あなたが思いやりの心を持ってやさしく接した看護師は、将来きっと、あなたをサポートする存在へと成長してくれるはずです。