仕事を覚えるのが早い人と遅い人の差
看護師は、日々、患者さんに看護ケアをおこなうために、たくさんの知識と技術を身に着けていかなくてはなりません。看護ケアに関することはもちろんのこと、疾患や治療方法、薬剤、検査、ときには制度や事務的なことまでも覚えていかなくてなりません。しかし、薬剤師や検査技師は看護の勉強をすることはありません。医療機関で働く人のなかでも、看護師ほど幅広い部門のことを勉強しなくてはならない職種はないでしょう。看護師は常に患者さんのそばにいます。患者さんから何か聞かれたとき、「わからない」ではトラブルのもとになってしまうため、詳しい専門知識まではわからないにしても、ある程度答えられるようにしておく必要はあります。必至で勉強したためか、気付けば知識に差がついている同期や、先輩から「あの子のほうが覚えるのが早い」と評価されている人を見たこともあるかもしれません。
看護師として働くうえで心がけるべきこと
看護師として働き始めると、消化器科、循環器科、血液内科、整形外科、救急科、精神科などさまざまな診療科に配属されます。その診療科によって、求められることが異なります。例えば、生死に関わることが起きた場合、循環器や救急科はその力を発揮できますが、急変などが少ない診療科では、戸惑い何もできなかったと、同じ看護師でありながら感じてしまうことも少なくありません。また、同じ診療科であっても、経験の差によってもできることできないことがあります。同期でありながらその差を目の当たりにしたとき、「私は何でこんなに覚えが悪いんだ」と悩んでしまうこともあるかもしれません。しかし、決してその人は仕事の手を抜いているわけではありません。一生懸命業務をおこなっているのです。悩んだり落ち込んだりしないためにも心がけてほしいことがあります。
- 他の人との比較はしなくていい
- 知識はほどほど。詰め込み過ぎない
- 先輩看護師が言っていることはすべて正しいわけではない
- 出来ることよりも出来ないことを積極的に
- 辛いときには「辛い」と口に出す
- 始めから理想は低く
などを心がけていれば、多少は気持ちも楽になってくるのではないでしょうか。
他の人との比較はしなくていい
他の人と比較をすることで、やる気がでるのであれば問題ありませんが、すべての人がそうではありません。「同期に差をつけられた。どうしよう。焦ってしまう」と思う人も多いですし、特に新人時代は悩みがちになってしまいます。しかし、それは仕方がないことでしょう。同期でも、診療科によって特色がでます。同じ診療科だったとしても、指導にあたる先輩によって仕事を覚えるスピードなどが変わってきます。新人はわからないことかもしれませんが、先輩看護師は、いち早くその新人さんの特徴をとらえて指導方法を考えます。そもそも、新人全員に同じような指導をしていないのです。
その新人がゆっくりペースであれば、詰め込み過ぎないように指導をします。逆にパワフルな新人にはいろいろ経験はさせますが、途中追いついてこられなくなることも多いため、ペースを落としたりして工夫しながら指導しているのです。もし、みんな同じような指導方法をとっているとしたら、それは指導側に問題があるといってもよいかもしれません。
当たり前なことですが、同じ人間は2人といません。違いがあって当たり前なのです。最初は、差がでたと焦ることもあるかもしれませんが、その差は次第に縮まり、できることも変わらなくなってきます。他の人との差を気にする必要はないのです。もし、先輩看護師に「同期なのに差がある」と言われた場合は、「人それぞれだからしょうがない」と思いつつ、何が違うのか分析してみることも自分のステップアップにつながるでしょう。
知識をほどほど。詰め込み過ぎない
看護師はたくさんのことを勉強しなくてはなりません。看護ケアにまつわることから、解剖生理、ときには細胞レベルまで勉強することもあります。中には、看護師でありながら「この看護師。医者か」と思わせるぐらい知識が豊富な人もいますが到底追いつけないでしょう。先輩看護師からは「勉強しなさい」と言われ、自分自身も「勉強しないと」とが口癖のような人もいますが、口癖のように言う人ほど、実際は勉強していないものです。
そのため、あまりにも口癖のように言う人は、「結局やってきていない」と思われてしまうので、発言にも注意が必要です。最初のうちは、業務を覚えるだけでも大変なことであり、終わる頃には疲れきっています。疲れきったところで勉強しても身にはならないでしょう。知識をつけるのであれば、一気に勉強するのではなく、一日何分と決めてコツコツ勉強していく方が、習慣化され、知識が身に付くスピードも早くなるでしょう。
先輩看護師が言っていることはすべて正しいわけではない
新人として働き始めて数ヶ月たった頃に、先輩看護師から「他の子と比べて仕事が遅い」「私も覚えるのが早い方ではないけど、あなたほどではない」「看護師向いてないのでは」とはっきり言われ、落ち込んしまうケースもあります。ですが、あくまでもこれは先輩看護師の主観です。私は一度転職の経験があり、新しい病院では年下でも先輩にあたるため、年下からこのようなセリフを吐かれたこともあります。「看護師向いていないのでは? 私のときはそんなミスはしなかった」と言われたときは正直いい気分ではありませんでしたが、「それはあなたの考えでしょう」くらいにしか思いませんでした。先輩の中には、自分の経験値で物事を話そうとする人もいます。看護の世界では、経験値は重要になってきますが、日々進化していく医療の世界で、その経験ももう古いとされることもあるのです。むしろ新人の方が最先端の医療や看護を知っていることもあるので、先輩看護師が言っていることがすべて正しいと、うのみにはしないことです。
出来ることよりも出来ないことを積極的に
やったことがないこと初めてやるときは恐怖心はつきものです。出来ることを更に追及して、得意になることは決して悪いことではありませんが、出来ることをずっと続けていても、出来ないことの方が多くなってきます。出来ないことが出来るようになるためには、事前の準備や勇気が必要です。積極的にチャレンジした結果、失敗したり怒られたりすることもあると思いますが、必ずそれは自信となり、プラスとなっていきます。中には、何でもかんでも積極的におこなおうとして、許容範囲をオーバーして整理ができなくなってしまう人も少なくないので、どこまでなら出来そうかよく考えましょう。
辛いときには「辛い」と口に出す
新人のときには、たくさんの知識と技術を吸収しながら業務を覚えていかなくてはなりません。先輩や医師に怒られることもたくさんあり、日に日に疲弊してきます。働き始めて3ヶ月ぐらいたった頃に、一度体調不良を訴える人も多いです。新人のときには、例え身体が辛いと思っても言いづらい傾向が看護の世界にあります。指導者が厳しい先輩だと、「まだまだ、何もしていない。そのぐらいで弱音は吐いていられない」と言う人もいますが、中には「大丈夫? 身体辛くない?」と優しく声をかけてくれる先輩も1人はいるはずです。そのように声をかけてくれる先輩には、「身体が辛くなってきました」「疲れ気味です」とい素直に伝えましょう。先輩に聞いてもらえるだけでも、気持ちは楽になります。
始めから理想は低く
夢や目標を抱き看護師の道に進む人もいます。しかし、実際に臨床で働き始めると、現実と理想にあまりにもギャップがあることを知ります。もちろん、夢や目標、理想を掲げることは、仕事をしていくうえでの活力にもなりますが、その逆にも成りうる可能性もあるということです。看護師の仕事をしていく中で、どんな辛いことがあろうが、夢や目標を絶対に達成するという不屈の精神があれば問題ありません。しかし、目標が高すぎると、現実を知って打ち砕かれたときの喪失感は計り知れません。そうならないためにも、最初は比較的すぐに達成できそうなことを目標にして、徐々により高い理想を掲げていく方がうまくいくのではないでしょうか。
仕事を早く覚える人と遅い人の違い
仕事を覚えるスピードは人それぞれ。そうはわかっていてもやはり、早い人の方が得をすると思ってしまいます。では、早い人と遅い人の差はどこで生まれるでしょうか。必ずしもこれが正解というわけではありませんが、今まで一緒に仕事をしてきた人の中でみられた傾向としては、仕事を早く覚える人には以下のような特徴がありました。
- 観察力が鋭い
- 「聞く力」がある
- イメージを持つ力がある
- 振り返りの習慣がついている
- インプットとアウトプットがきちんとできる
観察力に関して
看護師の間でも、「すぐに聞くんじゃなくて、見て盗んで」と言われることはしばしばです。先輩の仕事をよく見ることは、仕事を早く覚えるためにも重要なスキルとなってきます。しかし、ただ眺めているだけでは意味がありません。先輩を見ながらメモを残すことも大切になります。人間は忘れる生き物です。そうならないためにもメモを残すことは振り返りにも役立ちますし、有効な手段と言えます。
聞く力に関して
新人の間は仕事の初心者です。先輩にわからないことを質問したり、聞かれたりすることも多いでしょう。言わば教わる立場にあります。そのため、「まずは聞く」といったスタンスを持つことが重要です。ただ頷いているだけでは、わかっているのかどうか相手に伝わりません。説明している方も、「本当に理解しているのか?」と不安に思います。そういったときにはオウム返しをしてみたり、逆に質問したりといった方法が有効的です。オウム返しや質問をすることで、理解が深まり、記憶に定着しやすくなります。仕事を早く覚える人は、何かを言えば必ず何かを返してくる傾向にあります。
イメージ力に関して
仕事を早く覚える人は、イメージ力も強い傾向にあります。例えば、実際に自分がおこなわないことだとしても、自分がおこなっているかのようにイメージできます。そして、実際に見学したときに、イメージの中の自分との違いを照らし合わせるのです。これは誰しもができることではないかもしれませんが、覚えるのが早い人に聞くと、「いつも妄想している」と答えが返ってきたときには思わず納得してしまいました。筋力トレーニングで、理想の体型をイメージしながらトレーニングをする人としない人では、同じトレーニング方法を実践していても差がでると言われています。
振り返り
仕事をしている中で「振り返りしてね」と言われることは少なくありません。先輩に「振り返りしてね」と言われてその場で振り返るのでなく、仕事が一段落したときや自宅に帰ったときに、その日にあった出来事を振り返ることが重要ではないかと思います。「さっき言われたことを自宅に戻ったら思いだした」など、突発的に思い出すこともありますが、そんなふうに冷静になったときに思い出すのは、無意識のうちにも1日の振り返りをしているからでしょう。そうでなければ、思い出すなんてことはないように思えます。1日の振り返りは、何十分もした方がいいというわけではありません。返って振り返る時間が長くなってしまうと考えすぎてしまい、それが悩みに変わってしまう可能性があるからです。
1日5分程度でも有効ではないかと思います。「今日は〇〇先生の介助でこの方法を実践したら怒られたから、次は注意して別の方法でやってみよう」「今日患者さんに質問されて答えらなかったら、次はちゃんと答えらえるようにしよう」など、その程度で構わないと思います。重要なのは、そこで完結する。それ以上のことは考えないことです。わたし自身、1年目、2年目はどんなお酒を飲んでいようが、どれだけ体調が悪かろうが、毎日5~10分程度は振り返っていました。そうすると、翌日に同じようなことがあった場合に対応しやすくなり、自分の動きも変わっているように思えました。
インプットとアウトプット
仕事を覚えるのが早い人と遅い人は、この差が一番大きいのではないでしょうか。看護師は日々、調べたり、研修に行ったりと学ぶ機会が多いです。しかし、インプットした情報をすぐに使わない人もまた多いです。いくらインプットしたところで、アウトプットできなければ意味がありません。学んだことをすぐにアウトプットできれば、スキルとして磨くことができます。アウトプットは、身体を動かすことも有効ですが、誰かに話したり、独り言などで口に出したりすることも有効です。インプットしたことを頭の中に収納したままにしないことです。インプットとアウトプットはセットです。これを繰り返していくことで、確実に差がでてくるでしょう。