新人看護師あるある
私は現在、総合病院の外科病棟で働く看護師です。私の病院には、付属で看護専門学校があるため、毎年一定数の新人が入社してきます。そこで今回、新人看護師のあるあるエピソードについて、周りの医療スタッフの声や私の体験をもとに紹介していきます。今回の記事が、より良い病院運営に繋がればと思います。
新人看護師の気持ち
私の働く病院では、毎年付属の看護専門学校やその他の学校からも一定数の新人が入社し、各病棟に配属されます。毎年入ってくる新人は個性もさまざまであり、中には育て方に苦労させられる新人もいます。理想と現実にギャップがあり、看護師として働くことが難しくなってしまう新人もいます。せっかく国家資格を取得して就職できたのに、新人のうちに退職してしまうのはとても勿体ないないことです。
どのような職種でも、新人時代は苦労が絶えないものであり、慣れるまでは大変な思いをすることが多いです。その中でも看護師は責任のある仕事であり、自分の行為が生死に直結するため、命を預かる身として先輩看護師からの指導も厳しくなりがちです。
患者さんを看るには、それぞれの疾患の知識があることが前提であり、処置をする際には技術も必要になります。教科書には載っていないような医療の略語も飛び交っている中で、新人時代は、覚えることが膨大にあります。日々の業務で疲労が蓄積されている上に、自己学習もしなければいけないため、学習が追い付かず、時には先輩から厳しい指導をされてしまうこともあります。
新人のうちは特に、先輩看護師に気を遣いますし、夜勤もあり、業務に身体が慣れるまでに時間もかかり、心身共にストレスを感じていることが多いです。しかも、医療現場ではミスは許されないため、プレッシャーを感じている新人看護師が多いです。
理想と現実にはギャップがあり、理想どおりにいかないことも多くあります。働いていく中で、徐々にこのギャップを受け入れていくことができ、成長していくのですが、少しでも理、理想と現実とのギャップを埋め、あるいは理解を深めていくためには、周りのサポートが必要となります。
新人看護師あるあるエピソード
ここからは、新人看護師のあるあるエピソードを紹介していきます。どのような立場の人も新人時代があったはずなので、自分の新人時代のことを思い出しながら共感しながら読んでいただけると幸いです。
わからないことがわからない
新人時代は、何もかもが初めてのことであり、先輩看護師から「何かわからないことがあったら聞いてね」と声をかけられたとしても、何がわからないのかが、そもそも理解できていないことが多いです。質問されて初めて、自分が理解していないことに気づかされるような場面も多いです。
勉強するように指導を受けたとしても、何がわからないのかわかっていない場合には、どのように勉強すればいいのかもわからない状況になっていることが多いと思います。そのようなときには、正直に何がわかっていないのか、勉強の仕方がわからないなど、先輩看護師に相談すると、的確なアドバイスをもらえたりします。
同じことを何度も聞いてしまう
新人の中には、同じことを何回も聞いて注意を受ける人もいます。別の先輩に聞けばいいと思うのかもしれませんが、どのような指導をしたかは先輩間で情報共有されていることが多いため、以前にも同じようなことを聞いていたのであれば、それがすぐにわかってしまいます。
このようなことにならないためにも、指導内容をしっかりとメモして復習をしたりする必要があります。それでもわからなかった場合には、「以前にも指導を受けたのですが、理解が不十分だったのでもう一度ご指導お願いします」などの一言を付け加えれば、先輩看護師も快く指導してくれるはずです。
人間関係の悩み
人間関係の悩みは、どの職場でも尽きないものであると思いますが、看護師の職場では、特に人間関係に悩む新人看護師が多いです。医療現場は多忙であり、バタバタとしていることが多いです。やることが多く、自分に余裕がないときには、スタッフ間のコミュニケーションも雑なものになりがちです。
新人の看護師の中には、これに慣れず、「こわい」と感じてしまう看護師もいます。また、先輩看護師の中には感情的になってしまうスタッフもおり、熱のこもった指導にストレスを感じてしまう新人看護師も少なくありません。
成長してほしいからこそのことばであったと、指導されたほうも経験年数を重ねればわかるのですが、新人の頃は、客観的に考えたり、相手の立場に立って考えたりする余裕もなく、怒られたことにだけとらわれてしまうこともあります。
休暇希望を出しにくい
シフト制である看護師の勤務は休みも不定期のため、家族や友達、恋人と休みを合わせたいときには、事前に休暇希望を出す必要があります。しかし、新人のうちは先輩看護師に気を使ってしまい、休暇希望を出しにくかったりします。
私も新人の頃は休暇希望を出しにくく、予定があっても、先輩と休暇希望が重なっていた場合には、希望を静かに取り消すことが多かったです(笑)。当時の私は、「まだろくに仕事をこなせていないのに休み希望を出してもいいのか」といった考え方をしてしまい、なかなか休暇を希望できませんでした。
しかし、今思えば一生懸命働いているので、休暇中にリフレッシュすることも大切であると思います。仕事とプライベートのバランスをうまく取って心身共に元気に働いてほしいな、と思います。
インシデントのショックが大きい
インシデントは、自分が十分に注意していても、ミスや確認不足が重なった結果、起きてしまうものです。さまざまな要因があるため、一概に当事者だけが悪いとは言えません。経験していけばそのことに気づくのですが、新人のうちは自分を責めてしまいがちです。
また、インシデントには複数名の医療スタッフが関わっていることも多く、今後同じようなミスが起きないようにするために、インシデントの内容をスタッフ間で共有したり、申し送りの場で伝達があったりすることもあります。医療現場で長く働いていれば、共有の大切さも理解できるのですが、このことを理解していない新人からすると、まるで自分のミスを公表されてしまったかのように感じ、ストレスを感じてしまうこともあります。
新人がストレスを感じないように、なぜインシデントの内容を共有するのか、必要性について指導し、対応策を考えることの大切さに気づかせることも必要になります。インシデントを起こしたあとはショックも大きいため、そこは先輩看護師がフォローをしていくことが大切になります。
声かけのタイミング
どのような職種であっても、報告・連絡・相談は、非常に重要になります。看護師は、変化しやすい患者さんの状態などを報告したり、相談したりすることが特に重要になります。この、報告・連絡・相談のタイミングは非常に重要であり、報告が遅すぎると適切な処置ができなくなり、患者さんの病態が悪化したりしてしまいます。
経験していくうちに適切なタイミングは理解できるのですが、新人のうちは、重要なことを必要なタイミングで報告できず、「どうしてそれ、気づいたときに言わなかったの!?」なんてことになるケースが多いです。
新人としては、忙しそうな先輩看護師の姿を見てタイミングをうかがっているうちに報告が遅くなってしまった、などの意見も考えられますが、そこは命を預かる医療従事者として責任を持たなければいけないことを、日々の業務の中で学んでいくことが多いです。
アセスメント
看護師には、アセスメント能力が重要になります。観察したことや検査データなどのさまざまな情報から、患者さんの体の中で今何が起きているのかアセスメントして、報告する能力が必要になります。これには、知識や経験が関わってくるため、知識や経験値のない新人は、アセスメントが難しいことが多いです。
必要な情報を観察できていたとしても、それが患者さんの病態と結びつかず、アセスメントがうまくできない新人看護師は多いです。これは、日々の業務の中で経験や知識を積んでいく中で少しずつ身に付くものであるため、先輩看護師のアドバイスを受け、頑張って学習していってほしいと思います。
アセスメント能力が身に付けば、優先順位を適切に考えることもできるため、スムーズに働くことが可能になってきます。
知ったかぶりは通用しない
新人看護師の中には、怒られることを気にしてわからないのに知ったかぶりをしてしまう人もいます。また、観察し忘れていたのに、適当なことを言って観察したことにするなど、防衛本能からか小さな嘘を重ねてしまう新人看護師がいます。
その場では乗り切れることもあるかもしれませんが、このような対応は、本当にやめるべきです。例え、先輩看護師がその場で指導しなかったとしても、すぐに嘘はバレます。
私もよく新人に指導することがあるのですが、例えば、「傷の状態はどうだったの?」と聞いた際に、新人看護師が「問題ありませんでした」と答えたとします。ここで会話が終われば、新人にとっては良かったのですが、多くの先輩看護師は、どう問題がなかったのか具体的に聞こうとします。聞いているうちに「じゃあ、創部は何で保護されていたの?」などと具体的な質問をした際に答えられなくなり、「実は観察していませんでした」と話す新人看護師がいます。
ここできちんと観察していなかったことを告白できたならまだいいのですが、中には、観察していないことがバレているのに嘘を貫き通す新人もいます。これでは、信頼を失ってしまうので本当に気を付けてほしいです。
新人看護師の育て方
新人の頃は、心身共にストレスを感じることが多いため、新人を育てる先輩看護師の配慮も必要になります。新人を育てる際のポイントを以下にまとめます。
- 忙しい中でも新人とのコミュニケーションをしっかりと取る
- 厳しい指導をしたあとには、精神的なフォローを十分におこなう
- 根拠を新人でもわかることばでしっかりと伝えて指導をおこなう
- 新人それぞれの個性に合わせた教育や指導をおこなう
- 多忙な業務の中でも振り返りをできる場を設け、一緒に考える
私の病院では、プリセプター制度というものがあり、マンツーマンで新人の教育をして、時には、相談役として新人の不安を取り除いていく役割があります。新人看護師は、1人で悩みを抱え込んでしまいがちであるため、このようなプリセプター制度があると、新人のストレスを緩和することにも繋がります。
責任のある看護師の仕事では、時には厳しい指導をしなければいけない場面もあります。厳しいことは、先輩看護師もできれば言いたくはありませんが、今後の新人看護師のことを思っての対応であると思います。期待しているからこその厳しいことばであることを理解できるような指導を心がけることが必要です。指導後には、十分な精神的なフォローをすることで良い人間関係を築いていけます。
また、医療現場では、多忙なことが多いですが、忙しい中でも新人と向き合って日々の業務を振り返る機会を作り、困っていることやわからない点がないか確認していくことも必要です。今回の記事が、新人看護師の対応について考えるきっかけとなり、病院運営やより良い医療現場に繋がれば幸いです。